自分の作品がアニメ化することになった時、アフレコの見学をした。
いろんな声優さんのライブを見に行ったりもしているので、とても楽しみだった。
最初は声優さんに会えることを楽しみにしていたが、実際にリハーサル(?)や本番で声が入るとかなり驚いた。
自分の頭の中だけで動かしていたキャラクターに具体的な声が入って、どんどんキャラクターのイメージが膨らんでいって、頭の中でどんどん動くようになる。
まだこの作品を続けられそうだ。
そんなことを思っていると制作会社の方から「ちょい役に声を当ててみない?」と言われた。
自分がオタクであることを担当も制作会社の人も知っているので、「もし良かったら記念に」ということらしい。
でも断った。
原作者の特権だとかいう理由で、声優さんの仕事を奪ってはいけないと思った。
これはきっと「芸能人だからという理由でちょっとした連載している」に近いことなのではないか。
自分が新人だった頃、紙面のそんなコーナーを見て「芸能人ってだけで連載できるなんてずるい」と思っていた。
こっちは必死に掲載されるために、アルバイトをして作品を書いてということを繰り返しているのに、知名度だけで連載をもらえるなんてズルいのだ。
だからきっと、自分が声を当ててしまうと、「一言だけでもいいので、アニメに出たい」という声優さんの仕事を奪ってしまうことになるのではないかと。
この選択はきっと正しかった。