ときどきふっとさみしくなる。
でもそんなこと人には言えない。
この齢になってもきれいな妻、
清潔で住み良い区内のマンション。
職場での人望も悪い方ではないと思っているし、
先月まとめた大きな案件は順調に動いている。
それでも、この不安はなんだろう。
何かがうまくいくほど、
閉じ込められて窮屈になっていくような気になる。
考えはじめると苦しくなってくるから、
付き合いはじめたのは去年の春だったか。
俺にしては長く続いてる。
2週間前は仕事の後に、さっきは昼下がり。
セックスが終わってベッドのなかで抱き合ってる時には、
でももちろんそんなこと口にはしない。
たまに愛の言葉なんかをつぶやいてみると、
それでも少し照れる。
心が軽くくすぐられるのを認めながら、
ふふっと微笑む。
遅めの昼ごはんを食べた後、
退屈して隅のほうで様子を眺めていると、
同じように退屈した若い子と目が合った。
たしか、前にもどこかのパーティで見かけたことがあったような。
向こうが近づいてきたので話を始めると、
なにかしら返事しておかないと後ですねるから、
ささっと携帯をとりだす。
すぐに返事があって、飲み過ぎちゃ駄目、
ふふっ、かわいい女。