2014-12-26

[] 11人の増田。「よにんめ」

 あの事件のことが知りたい?

 ふん。物好きなやつもいるもんだな。

 記事でも書くつもりか? まあいい。

 で、今までどれぐらい話を聞いた?

 三人か。どいつも頭のおかしいヤツらばかりだったって?

 ははは、それはそうだろうよ。ここは増田だ。ここではどいつもキチガイのふりをして遊ぶんだ。中には本物のキチガイもいるがな。

 っと、話がそれたな。あの事件のことか。いいだろう。話してやる。

 あれは嵐の夜だった。強烈な雨と風が吹き荒れて、窓の外は何も見えなかった。耳に入ってくるのは雨が叩きつけられる音ばかりだ。嫌な夜だったよ。

 俺はいもの様に増田へ行った。そうしたら、妙にざわついていたんだ。

 増田はいつもざわついてるって?

 まあ、それはそうなんだがな。その時はざわつきの種類っていうか、質感、肌触りがいやに粘っこかった。ベタついていた。

 俺はそのへんのやつを捕まえて、何があったか聞いてみたんだ。

 そうしたらそいつが、いきなり、

増田に神が降臨した! ついに神がっ!」

 なんて叫びながらどこかへ行っちまった。たぶん、頭のイカレタ野郎だよ。増田にはよくいるんだ。ああいタイプが。

 次に別のやつを捕まえたら、そいつが、

「アオニサイガーオニサイガー

 しか言わないんだ。何を聞いてもそれしか言わねえんだよ。気持ちわりいからブチのめしてやった。まっ、ここじゃ日常茶飯事だ。

 仕方ねえから適当にぶらついて自分の目で何があったのか確かめたんだ。

 人が死んでいた。あれは殺しだ。頭がぱっくりと割れていて、中から脳が取り出されていたんだ。代わりに、ドッグフードが詰まっていた。

 脳を盗んでドッグフードを詰める。それにどんな意味があるか、俺には分からないが、あれは間違いなく殺しだった。

 ん、被害者は誰かって?

 そりゃあ、あいつだよ。あれ、誰が死んだんだ……。思い出せない。おかしい。俺の知っているやつのはずなんだ。だが、なぜか思い出せない。

 性別? ああ、あれは、おと、いや、女か。違う。そうじゃない。どっちなんだ……。わからない。なぜわからないんだ。俺は見たはずなのに。

 死体が消えた。そう。消えたんだ。

 神々しい光がいきなり出てきて。

 それが。

 ああ。ダメだ。ああ。

 すまない。

 トイレに行ってくる。待っててくれ。

 光が。

 目がチカチカするんだ。

筆者補足

 男がトイレから戻ってくることはなかった。

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