あの事件のことが知りたい?
ふん。物好きなやつもいるもんだな。
で、今までどれぐらい話を聞いた?
三人か。どいつも頭のおかしいヤツらばかりだったって?
ははは、それはそうだろうよ。ここは増田だ。ここではどいつもキチガイのふりをして遊ぶんだ。中には本物のキチガイもいるがな。
っと、話がそれたな。あの事件のことか。いいだろう。話してやる。
あれは嵐の夜だった。強烈な雨と風が吹き荒れて、窓の外は何も見えなかった。耳に入ってくるのは雨が叩きつけられる音ばかりだ。嫌な夜だったよ。
俺はいつもの様に増田へ行った。そうしたら、妙にざわついていたんだ。
まあ、それはそうなんだがな。その時はざわつきの種類っていうか、質感、肌触りがいやに粘っこかった。ベタついていた。
俺はそのへんのやつを捕まえて、何があったか聞いてみたんだ。
そうしたらそいつが、いきなり、
なんて叫びながらどこかへ行っちまった。たぶん、頭のイカレタ野郎だよ。増田にはよくいるんだ。ああいうタイプが。
次に別のやつを捕まえたら、そいつが、
しか言わないんだ。何を聞いてもそれしか言わねえんだよ。気持ちわりいからブチのめしてやった。まっ、ここじゃ日常茶飯事だ。
仕方ねえから、適当にぶらついて自分の目で何があったのか確かめたんだ。
人が死んでいた。あれは殺しだ。頭がぱっくりと割れていて、中から脳が取り出されていたんだ。代わりに、ドッグフードが詰まっていた。
脳を盗んでドッグフードを詰める。それにどんな意味があるか、俺には分からないが、あれは間違いなく殺しだった。
ん、被害者は誰かって?
そりゃあ、あいつだよ。あれ、誰が死んだんだ……。思い出せない。おかしい。俺の知っているやつのはずなんだ。だが、なぜか思い出せない。
性別? ああ、あれは、おと、いや、女か。違う。そうじゃない。どっちなんだ……。わからない。なぜわからないんだ。俺は見たはずなのに。
死体が消えた。そう。消えたんだ。
神々しい光がいきなり出てきて。
それが。
ああ。ダメだ。ああ。
すまない。
トイレに行ってくる。待っててくれ。
光が。
目がチカチカするんだ。