汚部屋であるところの私のアパートに管理人が勝手にクーラー点検人を入れ、
あまりの片付いてなさに私が哀れになったらしい点検人の兄ちゃんが部屋を綺麗に片付けてくれ、
ちなみにクーラー点検人が入ったのは名目としては異音がするのでその点検という話だったが、
その異音というのは私が目覚ましに使っているケータイのバイブ音なのだ。
管理人の本当の目的は玄関扉の下の隙間からたまにチラシとかはみ出ているいかにも汚部屋的雰囲気の私の部屋に
合理的な理由を付けて踏み込むことだったのだ。
しかし点検人の兄ちゃんが気を利かせて部屋のゴミを始末したため、私はアパートを叩き出されるのを免れた。
「片付けられない」のは義務教育前から続く私のコンプレックスの一つだ。
正確にいえば、片付けられないことを酷く責められる、眉をひそめられる、ため息をつかれる、一周回って逆に「良いのよ何も思ってないわよあなたの勝手ですものね」と気を使われる、ことが。
片付いた部屋は足の踏み場があって快適だった。管理人とその息子夫婦と小学生の孫が実際には存在しない防火扉の施錠を解除してわーっとなだれ込んできて「あら綺麗に使ってもらってるじゃない」と勝手にあちこち入り込んであれこれ見てはニコニコしていた。
虫酸が走る。
自分以外の人間に自分の部屋を見せるなんて死んでも嫌だ。ひどい悪夢だった。
遅刻しそうだ。