2021-08-08

セミ最期は澄んだ空を見ることさえできない

こういう詩的な描写ができる科学者文章ものすごくすき

とくに生命科学系にこういう文章が多いすね

セミ最期は澄んだ空を見ることさえできない

土の中に何年も潜り、一夏で子孫を残す

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稲垣 栄洋 : 静岡大学農学部教授

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2019/08/25 6:20

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一方、活動量が大きく、子孫を残さなければならない成虫は、効率よく栄養補給するために篩管液を吸っている。ただ、篩管液も多くは水分なので、栄養分を十分に摂取するには大量に吸わなければならない。そして、余分な水分をおしっことして体外に排出するのである

セミ捕り網を近づけると、セミは慌てて飛び立とうと翅の筋肉を動かし、体内のおしっこが押し出される。これが、セミ捕りのときによく顔にかけられたセミおしっこの正体である

夏を謳歌するかのように見えるセミだが、地上で見られる成虫の姿は、長い幼虫期を過ごすセミにとっては、次の世代を残すためだけの存在でもある。

繁殖行動を終えた成虫に待つのは…

オスのセミは大きな声で鳴いて、メスを呼び寄せる。そして、オスとメスとはパートナーとなり、交尾を終えたメスは産卵するのである

これが、セミの成虫に与えられた役目のすべてである

繁殖行動を終えたセミに、もはや生きる目的はない。セミの体は繁殖行動を終えると、死を迎えるようにプログラムされているのである

『生き物の死にざま』(草思社)。書影クリックするとアマゾンサイトジャンプしま

木につかまる力を失ったセミは地面に落ちる。飛ぶ力を失ったセミにできることは、ただ地面にひっくり返っていることだけだ。わずかに残っていた力もやがて失われ、つついても動かなくなる。

そして、その生命は静かに終わりを告げる。死ぬ間際に、セミの複眼はいったい、どんな風景を見るのだろうか。

あれほどうるさかったセミの大合唱も次第に小さくなり、いつしかセミの声もほとんど聞こえなくなってしまった。

気がつけば、周りにはセミたちのむくろが仰向けになっている。夏ももう終わりだ。

季節は秋に向かおうとしている。

https://toyokeizai.net/articles/-/295274?page=3

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