2019-10-31

あの頃のだれか ①

高層ビル最上から見下ろす景色は、

ついこの間までベッドの上で肌を重ねた

問屋の二代目の男を思い出させた。

カップルで賑わう観覧車も、

周辺に群がるシティホテルも、

並木通りを走る車のネオンも、

ついこの間私と彼が過ごした場所だ。

この三年間、お金が介する関係だったとはいえ

決して心が繋がっていなかったわけではない。

しろ、時には親子のように、

時には恋人同士のようにお互いを想い合い、

会っていない時でも心配しあう仲だったと思う。

あの頃の私は、同年代男の子たちと意味のない遊びをすることよりも、

二回りも歳の離れた大人男性関係を持つことのほうに強く興味を惹かれた。

どちらかといえばあまりセックスには

気持ち良さを見出せずにいた私だが、

彼とのセックスはいつも優しくて

自然と身をまかせることができた。

中年の男のセックスはねちっこいだなんて

揶揄する女性が多いみたいだが、

まりから終わりまでねっとりと肌を這う舌が

私にとっては当たり前のことのように感じられた。

しろ、それが愛なのだとすら思えた。

秘部をねぶりながら足首を持ち上げる手、

気持ち良さに浸っていると

つのまにか侵入にしている指先。

初めての経験が日々を塗りかえて、

わたしを変えていく。

しかし、三年が経つ頃に別れは訪れた。

本当にそれは突然だった。

いや、彼にとっては用意していた事だったのかもしれない。

少しの手切れ金と共に、二人の関係白紙に戻った。

暫くは食事が喉に通らなく、

手足が痺れ、放心状態だった。

これは自律神経失調症なのではないか

頭の中では冷静に判断ができた。

まずは仕事を探さないと。

そう思ってなんとか見つけた働き口は

彼と過ごした街を一望できるこの高層ビルだった。

最上から見下ろす景色

とてもちっぽけに、そして滑稽に感じられた。

きっとあの頃のだれかは

この下でまだ元気にしているのだろう。

  • とりあえずは一次通過て感じかな

    • で 二次 三次 最終選考まで狙うなら ありがちなネタは避けた方が良い 或いは衝撃的な書き出し。え!この先 主人公は一体どうなっちゃうの?ってな 例えば エレベーターホールに人が...

  • 彼女とはお金でつながる関係でいたかった。 お互いの気持ちを曇らせるために。 3年間の赴任先から元の居場所に戻ったときに、 いろいろなものを捨てた。電話番号も写真ももらった...

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