高い。Appleの製品は高価であるのがいつものことであるが、今回の新iPhone Xシリーズはあまりにも高い。
他社のフラグシップ端末と比較すると、その値段設定は強気すぎる印象を覚え、そしてそれを非難する声があがるのは十分に理解できる。
ではAppleが訴求するプロダクトを体験するにはフラグシップ端末でなければならないのか?と言えば、おそらくそうではない。
注目すべきは新しいSoCの「A12 Bionic」がエントリー端末と思われるiPhone XRへ搭載されていることだ。
更に言ってしまえば今回の重要なテーマであると思われる「写真」に関しても「撮影後の被写体深度コントロール」や「スマートHDR」がiPhone XRには搭載されている。
様々なリークやApple Special Eventの段階では多くの人がどことなくiPhone XSが基準にあって、iPhone XS MaxやiPuone XRが派生したかのような印象を覚えたが、実際の3機種の機能を比較し共通項を洗い出し、もう一度Apple Special Eventを観ると「今回のAppleの基準はiPhone XRにあるのではないか?」と思えてくる。
より先進的な機能を求めるユーザへは確かにiPhone XSやiPhone XS Maxを訴求している。しかしスマートフォン端末ユーザの主要層は先進的な機能を求めているわけでなく、標準状態でより優れたスマートフォン端末を求めているのだ。
Appleはその標準状態でより優れたスマートフォン端末への回答としてiPhone XRを示した。
Android OS端末の通例に則れば価格設定は搭載されるSoC(≒処理能力)の差によって決定されることが多い。Googleも確かにAndroid Oneシリーズでそのようにしている。
しかし、Appleは単純に安くて処理能力の低く、標準的な状態であるのに使いにくい端末を否定した。
Appleはできるはずなのだ。過去のSoCであるA11やA10を搭載し、カメラもHDRに対応していない非常に安いスマートフォン端末の開発ができるはず。
だがAppleはそれをしない。それはAppleの役目ではないから。Appleの役目は次の標準を世界に示すことだから。
次の世界はiPhone XRを標準として、iPhone XRが最低限として、iPhone XRが当たり前として、何とか安くiPhone XRを作るための知恵を絞る。