2018-04-26

ホラー小説けが救いだった

子供の頃、ホラー小説けが救いだった。

不幸な話は嫌いだった。本の中の世界でまで不幸に浸りたくなかった。

幸福な話は嫌いだった。そうでない自分が惨めになるから

救いがある話は嫌いだった。私は救われないのにお前だけずるいと思った。

ファンタジー小説は嫌いだった。私の世界がそうでないことに心底がっかりするから

異世界に行って帰ろうとする話は嫌いだった。ここが帰りたい場所と思える幸せなやつなんて嫌いだと思った。

異世界に行ったままの話は嫌いだった。なんでお前は逃げ出せて私はここから逃げられないんだ。

青春ものなんて最悪だった。

他人の満たされた学校生活なんて知りたくなかった。

悩みながらぶつかりながら部活動をやり遂げる話なんて、書いた作者は子供の敵だと憎んだ。推薦図書に選んでくる大人ごと全て憎んだ。

ホラー小説けが私の味方だった。

ホラー小説の中でなら、みんなだいたい死ぬ。ひどい目に合う。嫌な奴も良い奴も関係ない。何をしたかもしないかも、あんまり関係ない。理不尽死ぬ

いじめを描いた小説のように誰かが一方的になぶられることもなければ、人の心を傷つけたものがお咎めなしでのうのうと生き延びることもない。

みんな死ぬ理不尽がみんな殺してくれる。それはとても安心できる約束だった。スプラッタ小説ならなおよかった。幽霊怪異モンスターに悲しい理由があることもあったけど、襲われてる人たちはそんなこととだいたい関係いから、やっぱり理不尽なままで好きだった。

私の生きているこの理不尽世界を、みんなにも味わわせてくれるホラー小説は私のたったひとつの救いだった。

大人になって、ようやくあの頃子供たちに向かって勧められていた本を読めるようになった。とても面白くて、味わい深くて、優しい小説ばかりだった。

それでもその豊かさはあの頃の私にとって紛い物でしかなかった。

ホラー小説があってくれてよかったなぁと、時々新刊を手に取るたびに思い出すのである

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