佐野さんの件で思い出した事があったので書くけど、あまり良い思い出ではないから書いたらすっきり忘れようと思う。
自分は美大とか専門学校に行かずにグラフィックデザイナーになった。
運良くデザイン事務所に入れて、言葉どうりの下積み時代を経て今に至る。
今でこそ美大・美術系専門卒じゃないデザイナーも増えたけど、当時は美術系の経歴が無いデザイナーはそんなに多くなかった。
一人前のデザイナーとして仕事を任されるようになってから知り合った同業の方がいた。
最初はお互いの大変さを愚痴り合ったりそれなりに仲良くしてたいたのだが、
ある時、もう何がきっかけだったのかすら覚えていないけど
「貴方のような美大も出てない人がデザイナーを名乗る資格は無い。
私達(元美大生)は血の滲むような4年間を過ごし、多くの物を見て、作ってきた。
今後二度とデザイナーと名乗らないでほしい」
と言われた。
急に手のひらを返されてびっくりしたが、バックグラウンドの違いというのはやはり感じる事があったので、そうですか…としか言いようがなかった。
極端な例え話だが「私は医師免許を持っているけど貴方は持っていない。藪医者だ」と言われているように感じた。
これがこの人だけだったらそういう人に出会ってしまった交通事故的な話で済んだのだが、その後の転職等では実績と同時に美大卒を要求される事も多く、それは実力というよりはクライアントや代理店への対外的な意味合いが大きく、
採用側(美大卒)も美大卒(と桑沢)しか認めていないという雰囲気があった。
今回佐野さんを擁護していた人達を見て、そんなことがあったのを思い出した。
その線引きされた中のさらに内側では、トートバッグの件は「ちょっとしたミス」で片付けられることにとても驚いた。
こちらとしてはやろうとも思い付かない、万が一も無いけどやらざるを得なかった場合は確実に干されるようなことが、
あの中では許されるんだということが、本当にショックだった。
藪医者はどっちだったんだろう。
もちろんそうではない、ちゃんとした美大卒の方がいる事もわかっているけど、
そんな下らない村意識に劣等感を抱いていたのかと思うと馬鹿馬鹿しくなった。
わからないやつは黙ってろ的な発言もまた例の線引きかっていう感じではあったんだけど、
もうね、地道にがんばってきた者として今回の一連の件は本当に迷惑だし悲しい。