日本、大人になる
先週、民主党が、半世紀近くもずっと政権を握っていた自民党を政権から追いやったとき、一部報道機関は革命であると評した。
古い人たちはいなくなり、新鮮な風が吹き込んだ。
でもどうして人々は嬉しそうに見えないのか?
どんな政府あっても彼らの問題を解決してくれないことを、日本人は認識しつつあるからだ。
しかし、これはいいことである。日本はついに成長しているのだ。
メディアは街頭にレポーターを派遣して、新しい政権に何を期待するか聞いている。
人々はマイクに近づき、「景気をよくしてほしい」「社会保障を充実させてほしい」「失業問題を解決して欲しい」などと率直に述べる。
しかし彼らの表情は憂鬱そうで、これらの意見にどこか偽りがあるような感じがする。
昔は、政府が私たちの問題を解決することができた。戦後、日本の成長の大部分は政府主導であった。
国民は、政府が道路や病院を作り、商売を守り雇用を保障することを期待した。
今は、高齢化と年金問題が原因の一端となり、政府には物事を良くするだけの金がない。
自民党内の大勢は、民主党が勝ったわけでないと結論付けた。自民党が負けたのである。
これはレッドソックスがヤンキースに負けたときに、レッドソックスのファンがするひいきと同じである。
自民党が国民に幸福を届けられないことを、未だに理解していない人々がいる。
自民党は、農家、建設会社、中小企業に金をつぎ込むことで、地方有権者の支持を買ってきた。
戦後間もない頃、政治家の主な関心ごとは、コネと水面下の交渉によって企業を自身の選挙区に誘致することのようであった。
彼らは政治家というよりもロビー活動家として機能していたのである。
こんな楽な仕事は他にないだろう。だから彼らは自分の子供に継がせたがるのだ。
豊かなる日々はいつか過去のものとなったが、政府の大盤振る舞いを求める競争は続けられた。
ある選挙区で、政府に高速道路建設の補助金を欲しがる人々がいる一方で、別の人々は病院の建て直しを望む。
悪化する景気動向の中での、ここでの重大な問題は、病院は財政危機にあるということだ。
だが民主党が圧勝したからといって、道路の建設と病院の助成の両方をする金はない。
このような状況で政権が変わって歓喜するほど日本人はうぶではない。
もしくは生活がこれから向上すると信じるほど馬鹿ではない。
日本社会の一つの層が政権交代によって利益を得ると、他の層が損をする。
大企業は減税で救われるかもしれないが、労働者の給料は低迷したままかもしれない。
全てが夢のようにうまくいき、生活水準が上がり続けた時代はもう終わった。もうずっと前に。
今となってはもう金がないのだから、日本国民は厳しい選択をしなければいけない。
心の底では、私たちは皆このことを知っているのである。
だから街頭の人々の憂鬱そうな表情は変わっていないのだ。
しかし、だからといって低迷や衰退の危機にあるわけではない。
私たちはただ、子供が大人になっていくときの憂鬱さを経験しているだけなのだ。
http://www.nytimes.com/2009/09/08/opinion/08murakami.html
はてなブックマーク - 「日本は大人になる憂鬱を味わっているのだ」 村上龍氏が政権交代で米紙に寄稿 - MSN産経ニュース
http://b.hatena.ne.jp/entry/sankei.jp.msn.com/politics/election/090909/elc0909090830000-n1.htm
The days of plenty eventually disappeared, but competing demands for the government’s largess continued. One group in a given district might want the government to subsidize highway construction while another wishes to see the local hospital rebuilt...