例えば旦那がDVやモラルハラスメントの常習者で、ことあるごとに奥さんをぶん殴り罵倒していたとする。
この場合の構造はシンプルで、旦那は加害者で妻は被害者だ。それ以外何もない。
で、妻が子供を産み、旦那の暴力が妻と子供に向かうとする。この場合は、旦那を加害者とすると殴られている妻と子供が被害者になるわけだが、被害者の一人である子供から見れば、さっさと離婚や別居に踏み切らない母親、DVを受けざる得ない環境に身を置かせ続けた母親も立派な加害者、DVの共犯だったりする。
よくあるブラック会社の話もそうで、ブラック社員というのは理不尽な仕事を経営者から押しつけられ、残業地獄にあえいで苦しんでいる被害者なのだが、もうひとつ高い視点から見てみると、ブラック社員はブラック経営者とともにダンピングを繰り返し、定時に帰る社員に罪悪感を植え付け、健全な経営を目指すホワイト企業を倒産に追い込み、日本の労働環境を世界最悪まで悪化させている加害者だったりする。結局のところ残業をしまくる社員がいるから残業を押し付ける経営者が減らないのであって、第三者的な地点から見れば彼ら彼女らは単なる共犯なのだ。
そして、「被害者と加害者」が反転してしまうややこしい構造、これらに共通するのが「我慢」「忍耐」というワードなのかなと思う。
「我慢」「忍耐」というのは、「強烈な負荷がかかっているにも関わらず、その負荷を取り除いたり遠ざけたりする努力をせず、現状維持をしている」という状態だ。
そして、我慢を選択する人というのは「負荷の大元を取り去る努力」をしないので、いつまでも負荷は存在し続け、その負担が第三者に向かうことになる。これが「被害者が加害者に転ずる」構造だ。
→父親がDVをし続ける
また、負荷は直接的に第三者に向かわずとも、負荷を受けている人を通じて第三者に向かうこともある。
例えばすかいらーくかどこかでサービス残業を我慢し続けて倒れ、意識が戻らなくなってしまった人を両親が介護し続けているというような話があった。これについてもサー残を我慢し続けた人が「負荷の大元を取り去る努力」を行っていれば、両親も息子の介護という苦しい仕事に老後の時間をつぎ込まなくてもよかっただろう。両親はたぶん自分たちが被害者だとは思っていないだろうが、客観的に見れば「両親に重労働を押し付けている」のはすかいらーくであり、ブラック社員だった息子なのだ。
「我慢」というのはこのように、自分の人生だけでなく他人の人生までもを毀損してしまう恐ろしい行為なのだ。なら我慢なんかせずに、さっさと逃げるか戦うかをすればいいのだが、日本人というのは「我慢するのは大人の努め」「忍耐が出来ないのは子供。社会人として未熟」という大東亜戦争を戦った皆さんのようなありがた~~~~いクソ価値観(別名「社会人の常識(笑)」)を刷り込まれているので、強烈な負荷がかかり続けても逃げたり戦ったりすることも出来ず、潰されて鬱になったり自殺したりする。
それどころか、我慢せずに逃げる人を「無責任」「子供」「社会人として駄目」「どこに行っても通用しない」と罵倒し、我慢せずに戦う人を「金の亡者」「自分さえ良ければいいのか」「世の中を知らない」「KY」と叩きまくる人もたくさんいる。いるというか、私の皮膚感覚からすればそっちがマジョリティだろう。こうして何が正しくて何が間違っているのか判らない現場に放り込まれたブラック社員はどんどん疲弊していく。日本のどうしようもない閉塞感というのはこれが原因だろう。
これを踏まえた上で人生を楽しく生きるキーワードは「負荷を我慢」をしない、これに尽きるかと。私は元ブラック会社のダンピング社員だったので、サービス残業地獄のさなか「我慢出来ない自分が悪いのでは……?」というクソ思考回路も一通りトレースしてみたこともあるが、我慢せずにさっさと辞めて独立し、適切で人間的な労働環境を整えたら、それがいかに無意味で馬鹿馬鹿しく、自分の人生を毀損する害悪なものだったかがよく判るようになった。だって「負荷を我慢」なんかせずとも、楽しく、お金が稼げて、自分が成長できて人脈も作れる仕事なんか、世の中にたくさんあるのだから。同じ賃金を稼ぎ、同じだけ成長できるのなら我慢なんかしない方がいいに決まっている。昔の私はこんな単純なことも判っていなかった。
子育てなんかでも「我慢」を教えなければいけないというが、教えなければいけないのは「欲望に対する我慢」であって、今の日本人は「負荷に対する我慢」と「欲望に対する我慢」の区別がつかずにどんどん追い込まれているように感じる。「欲望」は我慢しないと性犯罪者、メタボリックシンドローム、成人病、多重債務者などに転落して人生終了だけれども、「負荷」なんかは全く我慢する必要はない。楽しく美味しく生きていく方法を探したほうがよほど建設的で、よほど充実しているのだから。
以下追記。
「負荷を我慢しない」方法はいくつかある。
これらはそれなりにリスクのある方法だが、「一生負荷を我慢し続ける」のとどちらがマシなのかを考える余地はあると思う。
ちなみに日本の会社は99.99%がブラック企業なので「いい会社を求めてジョブホップし続ける」という方法は地獄めぐりになりかねないので避けたほうが無難。大企業や公務員であっても残業地獄からは逃れられない。俺の知り合いの某一部上場企業社員は、子供がいるのに毎日26時ぐらいまで仕事をしているらしく「子供が産まれてから寝ている顔しかほとんど見たことがない。あと10年はこんな感じ」らしい。
また「ブラック企業の環境を変えてホワイト企業にしよう!」というのも不可能に近く、終わりなき闘争を強いられるので避けたほうが無難。仮に社員全員の価値観変革に成功したとしても、同業他社のブラック企業に食われて終わったりするので全く不毛。トリンプの吉越氏はこの変革に成功した経営者だが、相当な意志と才能と権力がないと出来ないので、一兵卒の状態でこの戦いに挑むのは辞めたほうがいい。戦わず逃げるのが賢明。
「ブラック企業の環境を変えてホワイト企業にしよう!」 俺の勤めている会社は少なくとも労働時間に関してはホワイト企業になった。 俺の入社当初はいわゆるブラックIT的に週に1日...
今は有給フル取得、一日8時間程度の労働で遅刻早退サボりは誰もとがめないホワイト企業になった。 「遅刻早退サボり」は咎めようよ。
「遅刻早退サボり」は咎めようよ。 なんで? 咎めても誰も得しないよ。 労働時間を短くするために必要なのは誰も得しない仕事を減らすこと。 仕事がないのに同僚に合わせて残業する...
労働時間を短くするために必要なのは誰も得しない仕事を減らすこと。 仕事がないのに同僚に合わせて残業するのが不毛なのと同じように仕事がないのに定時に出勤するのも不毛 サ...
無駄に仕事を増やして会社にいても仕方ないのはわかるけど、それが遅刻やさぼりになる制度下でやると、会社側の口実になってしまう。 だから、きちんと労使で話し合って、そうい...
指定された時間働けば内容はよかろうが悪かろうが関係ないのがフレックス。ただし時給には依存する 指定された作業を働けば、時間はかかろうが、かかるまいが関係ないのが裁量労働...
単に会社まるごとやる気がなくなっただけじゃねーかw >集中力も上がったし、ミスも少なくなったので労働効率がどんどん延びていき入社時の4分の1くらいの時間で同じ仕事ができる...
とはいえ安易に独立してしまうと、なかなか仕事が回らず 新たなダンピング企業が一つ出来上がるだけのような気が。
「抑圧委譲の体系」ですね。ああ美しき国日本。
強引に定時に帰り続ける 完全にというわけではないが、入社3年目ぐらいからやり続けてる。自分みたいな凡人は、毎日残業してると日中に全く集中できなくなるので。 残業代を払...
>日本の会社は99.99%がブラック企業なので 民間企業はその通り・・俺は公務員もやったことはあるが、自分で言うのもなんだが遊んでるのと同じだった。 公務員でたいへんなのは2割程...
別に強制されてるわけじゃないけど、なんとなく頑張っちゃって3時でタクシーで帰って翌朝出社とか昔はやってたな。 自分ではむしろ頑張って仕事してんな俺すげーと思ってたんだけど...
http://anond.hatelabo.jp/20090708104839 どうして被害にあった人が被害と戦わないと共犯者と呼ばれてしまうのか。 我慢していようがいまいが被害者は被害者じゃないのかなあ。 直接被害にあっ...
加害者てのは二重の意味で害を為している。 直接の被害者への加害行為と、 秩序への加害行為。 だから被害者が秩序の回復に尽力しなければ、秩序は被害者をも加害者と見なす。 ○ ち...
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/flash/KFullFlash20090610039.html 米映画俳優組合(組合員約12万人)は9日、待遇改善をめぐる交渉が難航していたハリウッドの映画・テレビ制作会社との新た...
http://anond.hatelabo.jp/20090708104839 コレ見て思ったけど 「私さえ我慢すれば」と「私さえ良ければ」はとても良く似ているよね。 どっちも、周りは関係なくって、自分一人でやってる感じが...
うん、似てない。病院いってきな。
前者は損して、後者は得する時の考え方だと思うんだけど、 結果は全然似てないな。
「我慢しない事」を実行出来るのは、一部の有能な人だけですね。 普通の人には無理。