2009-07-08

我慢することの害

例えば旦那がDVモラルハラスメントの常習者で、ことあるごとに奥さんをぶん殴り罵倒していたとする。

この場合の構造シンプルで、旦那は加害者で妻は被害者だ。それ以外何もない。

で、妻が子供を産み、旦那の暴力が妻と子供に向かうとする。この場合は、旦那を加害者とすると殴られている妻と子供被害者になるわけだが、被害者の一人である子供から見れば、さっさと離婚や別居に踏み切らない母親DVを受けざる得ない環境に身を置かせ続けた母親も立派な加害者DVの共犯だったりする。

よくあるブラック会社の話もそうで、ブラック社員というのは理不尽仕事経営者から押しつけられ、残業地獄にあえいで苦しんでいる被害者なのだが、もうひとつ高い視点から見てみると、ブラック社員ブラック経営者とともにダンピングを繰り返し、定時に帰る社員に罪悪感を植え付け、健全経営を目指すホワイト企業倒産に追い込み、日本労働環境世界最悪まで悪化させている加害者だったりする。結局のところ残業をしまくる社員がいるから残業押し付け経営者が減らないのであって、第三者的な地点から見れば彼ら彼女らは単なる共犯なのだ。


そして、「被害者加害者」が反転してしまうややこしい構造、これらに共通するのが「我慢」「忍耐」というワードなのかなと思う。

「我慢」「忍耐」というのは、「強烈な負荷がかかっているにも関わらず、その負荷を取り除いたり遠ざけたりする努力をせず、現状維持をしている」という状態だ。

そして、我慢を選択する人というのは「負荷の大元を取り去る努力」をしないので、いつまでも負荷は存在し続け、その負担が第三者に向かうことになる。これが「被害者加害者に転ずる」構造だ。

DVを我慢する母親がいる

→父親がDVをし続ける

DV子供に向かう

サービス残業を我慢する社員がいる

経営者サービス残業押し付け続ける

サービス残業が全員に押し付けられる


また、負荷は直接的に第三者に向かわずとも、負荷を受けている人を通じて第三者に向かうこともある。

例えばすかいらーくかどこかでサービス残業を我慢し続けて倒れ、意識が戻らなくなってしまった人を両親が介護し続けているというような話があった。これについてもサー残を我慢し続けた人が「負荷の大元を取り去る努力」を行っていれば、両親も息子の介護という苦しい仕事に老後の時間をつぎ込まなくてもよかっただろう。両親はたぶん自分たちが被害者だとは思っていないだろうが、客観的に見れば「両親に重労働押し付けている」のはすかいらーくであり、ブラック社員だった息子なのだ。


「我慢」というのはこのように、自分人生だけでなく他人の人生までもを毀損してしまう恐ろしい行為なのだ。なら我慢なんかせずに、さっさと逃げるか戦うかをすればいいのだが、日本人というのは「我慢するのは大人の努め」「忍耐が出来ないのは子供社会人として未熟」という大東亜戦争を戦った皆さんのようなありがた~~~~いクソ価値観(別名「社会人常識(笑)」)を刷り込まれているので、強烈な負荷がかかり続けても逃げたり戦ったりすることも出来ず、潰されて鬱になったり自殺したりする。

それどころか、我慢せずに逃げる人を「無責任」「子供」「社会人として駄目」「どこに行っても通用しない」と罵倒し、我慢せずに戦う人を「金の亡者」「自分さえ良ければいいのか」「世の中を知らない」「KY」と叩きまくる人もたくさんいる。いるというか、私の皮膚感覚からすればそっちがマジョリティだろう。こうして何が正しくて何が間違っているのか判らない現場に放り込まれたブラック社員はどんどん疲弊していく。日本のどうしようもない閉塞感というのはこれが原因だろう。


これを踏まえた上で人生を楽しく生きるキーワードは「負荷を我慢」をしない、これに尽きるかと。私は元ブラック会社ダンピング社員だったので、サービス残業地獄のさなか「我慢出来ない自分が悪いのでは……?」というクソ思考回路も一通りトレースしてみたこともあるが、我慢せずにさっさと辞めて独立し、適切で人間的な労働環境を整えたら、それがいかに無意味馬鹿馬鹿しく、自分人生を毀損する害悪なものだったかがよく判るようになった。だって「負荷を我慢」なんかせずとも、楽しく、お金が稼げて、自分が成長できて人脈も作れる仕事なんか、世の中にたくさんあるのだから。同じ賃金を稼ぎ、同じだけ成長できるのなら我慢なんかしない方がいいに決まっている。昔の私はこんな単純なことも判っていなかった。

子育てなんかでも「我慢」を教えなければいけないというが、教えなければいけないのは「欲望に対する我慢」であって、今の日本人は「負荷に対する我慢」と「欲望に対する我慢」の区別がつかずにどんどん追い込まれているように感じる。「欲望」は我慢しないと性犯罪者、メタボリックシンドローム成人病多重債務者などに転落して人生終了だけれども、「負荷」なんかは全く我慢する必要はない。楽しく美味しく生きていく方法を探したほうがよほど建設的で、よほど充実しているのだから。


以下追記。

「負荷を我慢しない」方法はいくつかある。

  • 独立開業してしまう。
  • 海外就労ビザを取得して逃亡。ワーホリなんかを使って海外へ行って人脈を作ってもいいかも。方法は(マジで)幾つもある。
  • ブラック会社でも強引に定時に帰り続ける。1ヶ月も強行すればその他大勢は諦めて「あいつは早く帰る人だから」となり、クビにならない限り一生定時に帰れる。

これらはそれなりにリスクのある方法だが、「一生負荷を我慢し続ける」のとどちらがマシなのかを考える余地はあると思う。

ちなみに日本会社は99.99%がブラック企業なので「いい会社を求めてジョブホップし続ける」という方法は地獄めぐりになりかねないので避けたほうが無難大企業公務員であっても残業地獄からは逃れられない。俺の知り合いの某一部上場企業社員は、子供がいるのに毎日26時ぐらいまで仕事をしているらしく「子供が産まれてから寝ている顔しかほとんど見たことがない。あと10年はこんな感じ」らしい。

また「ブラック企業環境を変えてホワイト企業にしよう!」というのも不可能に近く、終わりなき闘争を強いられるので避けたほうが無難。仮に社員全員の価値観変革に成功したとしても、同業他社ブラック企業に食われて終わったりするので全く不毛トリンプの吉越氏はこの変革に成功した経営者だが、相当な意志と才能権力がないと出来ないので、一兵卒の状態でこの戦いに挑むのは辞めたほうがいい。戦わず逃げるのが賢明

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        「遅刻早退サボり」は咎めようよ。 なんで? 咎めても誰も得しないよ。 労働時間を短くするために必要なのは誰も得しない仕事を減らすこと。 仕事がないのに同僚に合わせて残業する...

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      単に会社まるごとやる気がなくなっただけじゃねーかw >集中力も上がったし、ミスも少なくなったので労働効率がどんどん延びていき入社時の4分の1くらいの時間で同じ仕事ができる...

  • http://anond.hatelabo.jp/20090708104839

    とはいえ安易に独立してしまうと、なかなか仕事が回らず 新たなダンピング企業が一つ出来上がるだけのような気が。

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    「抑圧委譲の体系」ですね。ああ美しき国日本。

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