2024-04-26

家庭に問題があった。

父に問題があった。

祖父母問題があった。

 

母は私に言った。

他人を変えることはできないのだから自分が変わりなさい」と。

 

私は自分を殺した。

父の顔色を窺った。

祖父母に都合の良い振舞いをした。

 

進学をした。就職をした。

先輩のため、教師のため、上司のため、取引先のため。

私は自分を殺し続けた。

それ以外の処世術を知らなかった。

いつしか私は、社会を降りた。

 

母の言葉真意は、

自分より立場が上の人間のために、自分を殺しなさい」

という意味ではなかった。

自分他人境界をしっかり定めなさい」

という意味だった。

 

そのことに気付くまでに、三十数年が経った。

父も祖父母も死んだ。

母はこれからの限られた時間の中、自由生活謳歌するのだろう。

 

私の時は戻らない。

歪んで育った私の心も戻らない。

折れてしまった私の精神も、戻りそうもない。

 

辺りを見渡せば、多くのものを手にしている友人たち。

彼らにも苦労があったのだろう。努力をしてきたのだろう。

それは解るけれど、何も無い私の手には、あまりにも眩しい。

 

何も無い私は、これからどうして生きていけばいいのだろう。

何を糧に過ごしていけばいいのだろう。

何も分からないが、見知らぬ誰かの記憶に留まれるように、今日キーボードを打つ。

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