2023-09-16

10円落とした

病院自販機飲み物を買おうとしたら手元から10円がすり抜けて床でちゃりんと音をたてた。

普段なら落ちた瞬間すぐにでも目で追えるのだけども、当方臨月妊婦であるそもそも病院に来たのも妊婦健診だ。

硬貨を追うために下を見るにしてもそもそも自分の足先さえ見えてない。屈んで探そうにもお腹にはみっちりと赤子が詰まってる。

仕方なく4つ足をついて探したかったが、これまた不運なことに偶然すぐ後ろに掃除のおばちゃんが通りがかっており、私に発生した不運に「あらあら」なんて言っている。その上妊婦は大切にという信条なのか、手をついて自販機の下を覗きこもうとしたら全力で止められてしまった。

しかし代わりにおばちゃんが見つけてくれるわけでもない。いや、おばちゃんわずかに探す努力はしてくれたという事実はあった。見つからなかったけど。

ならば私に出来るロールはもう残り一つである

私は泣く泣く財布からもう10円を出して飲み物を購入し、おばちゃんに「あとで見付けてもどっかに寄附でもしておいてください……」と声を掛けた。

さようなら10円。ちなみに落としたのは場所こそ違うがすでに二回目だ。早くお腹の中の荷物を降ろしたい。

そんなこんなで落ち込みながら健診場所に移動していたらおじいちゃんの座っている椅子の下に100円玉が落ちているのを見つけてしまった。

私は少しの意地悪な気分でその100円は指摘しなかった。いつか私の10円と一緒に誰かへの寄付になるのだろう。

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