俺は40代。俺が小学生の頃の流行りの本ってさ、バブルの残り香のせいで、とにかく浮かれてオシャレだったんだ。旅先で食べたカツ丼が美味しかったからタッパーに詰めてもらって高速をタクシーで恋人に届けたりするんだぜ。サラダが美味しかったから記念日だとか。自分が住んでる田舎にはない世界がそこにはあると思ってた。ホント、都会スゲーって思ってたよ。歌の歌詞も浮かれてたな。ゲレンデが溶けるほど恋したいとかさ。
田舎にいたって、あれが幻だったのはわかる。
あの頃乱立したゴルフ場はさびれ、たくさんできた温泉宿は建て替え時期だったのもあって東日本大震災で宿を畳んだ。
でも、東京にいけば、あの空気がまだ残ってるんじゃないかって思ってる自分がいる。
現実はといえば、若者はタクシーでカツ丼を届けてもらうどころか、ウーバーイーツの配達員で自転車で届ける側だ。貧乏人はゲレンデが溶けるほど恋するどころか、格安バスツアーでバスごと谷底。