2023-04-04

プレゼント

年の離れた親戚のお兄ちゃん

さなわたしから見ればずいぶん大人だったけど、お兄ちゃんにとってわたしたちはおなじ子供で、同等に扱われるのが嬉しかった。熱烈な恋心、なんてものじゃない、わたしはただお兄ちゃんのことが大好きだったし、憧れていた。

お兄ちゃんの部屋は、わたしには手の届かない素敵なものであふれていた。パンクロックオールハリウッドフレンチカジュアル。それらを憧れの眼差しで眺めていると、ときどきお兄ちゃんがこう言う。

「それ、気に入ったんならあげるよ。俺もう使わねーし」

わたしはそれを大事に持って帰った。

お兄ちゃんのものを持っていると、同級生たちにくらべて自分がすこし大人になったような気分でいられる。

互いに成長して、一緒に遊ぶことは減ったけど、それでもたまに会えば、私たちはいつも仲が良かった。お兄ちゃんお土産がわりにと、会うたびにわたしに何かくれる。そういうときのお兄ちゃんは得意顔でかならずこう言う。

「おまえ、こういうの好きでしょ」

ものすごく趣味のいいものもれば、どうしようもなく下らないものもあった。

どんなにヒドいものでも「ありえない!」とふたりゲラゲラ笑えれば、それで良かった。

そしてある日、お兄ちゃん結婚すると聞いた。

わたし高校生になっていた。

お兄ちゃんのお嫁さんになりたいなんて、子供っぽい恋心を抱く年ではなかったけれど、それでも、わたしたちの関係がこれから変わってしまうことはすぐに分かった。

大好きなお兄ちゃん幸せになってね。

でも照れくさいからニヤリと笑ってこう言うの。

bye bye my sweet darlin

さよならしてあげるわ

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