2022-08-27

最後に残った文房具

デジタル化の果てに、あらゆる文房具が手元を去っていった。

まずシャーペンが消えた。

修正液は固まったまま寿命を迎えた。

セロテープは押入れか何処かで埃を被っている。

カッターナイフはハサミと僅かな居場所を争って敗れ去った。

黄色蛍光マーカーは先端ティップに黒インクの痕を残してゴミ箱へ消えた。

油性ペンキャップの微かな緩みに生気を吸われ、乾いていった。

レポート用紙を走り、数多の原稿を描き出してきた色とりどりのサインペンたちもまた、同じ運命をたどった。

ホワイトボードを飾った大小様々な付箋たち。彼らは取り止めのないアイデア、世に出ぬままに消えゆく夢を抱えたまま、落葉した。

そうして、残った古兵(ふるつわもの) 。

プリットスティックのり。高校時代から実に十数年、少しずつ身を削りつつも、その座を堅持してきた。接着の役目を持つ者たちの最後の生き残り。

PLUSフィットカットカーブチタンコートはさみ段ボール金属も布も、紙も。すべてを切断する万能性は、皮肉にも同族を淘汰する結果を招いた。

ジェットストリーム。唯一無二の書き心地で一世を風靡した彼は、孤高の筆記具として、いまも現役で活躍している。

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