ジェンダーギャップについて取材を受けた。女性であることを理由に被る不利益や抑圧や様々な被害について話しながら「男性には男性の辛さがあって」「(女性らしさだけでなく)男性らしさの押し付けもあって」と挟んでしまう。その話はしてないのに。「男性の読者」を怒らせないように振る舞ってしまう。
なんでこれが悪いのか、正直よくわからない。「男性には男性の辛さがあって」とは本当は思っていないということなのだろうか。少しでも思っているのだったら、それはむしろちゃんと伝えるべきだと思う。
女性への差別と「男性の辛さ」さはそもそも無関係ではない。「ちゃんと働いていないこと」への否定的な視線は、男性は女性の5倍ぐらい受けている。そのことは「男性の辛さ」の一つであるが、それが労働市場で女性が差別されていることと無関係ではないどころか、「男は女子供を養って一人前」というジェンダー規範の表れという意味で、きわめて密接に関わっている問題である。自分も「男性の辛さ」を論じる際は、必ず女性差別と一緒に論じることをむしろ心掛けている。
戦うべき相手が男性一般だと考えているから、上述のツイートになってしまうのだろう。しかしその考えは間違いである。本当に戦うべき相手は、既存のジェンダー秩序である。だとすれば、「男性の辛さ」は必ず同時に論じなければならない。決して男性の読者に媚びる媚びないという問題ではなく。