俺が行ったことのある王立植物園はただひとつ、マドリード王立植物園なんだけど、かなり好きだったんだよ
行ったのはたしか3月で、まあガッツリ冬なんで、これといって花なんかが咲いてるってことはなく、むしろ全体的に冬枯れの雰囲気が漂い、ダウンビートな感じだったんだけど、それがかえってよかった
人も少ないしね
とはいえ、俺とてそこまで侘び寂びを解する心を持ってるわけじゃないので、やっぱり一番印象に残ってるのは、季節に関係なく在る温室ということになる
マドリード王立植物園、たいしてデカい温室はないんだけど、2棟あるっていうのが特徴的だった
ひとつはまあ普通の現代的な温室で、サボテンコーナーと熱帯コーナーに分かれている、オーソドックスなもの
もう一つが個人的に一番よかった
なんでも19世紀に作られたっていう、そこそこ由緒のある、つまりは古い温室で、まあまあボロい感じがあるし、中にも大したものはないんだけど、とにかく雰囲気がいいんだよな
テニスコート程度の広さで、通路は狭く、所狭しと植物が植えられてんだけど、特に解説なんかがあるわけでもなく、見た感じメチャクチャ変わった植物があるわけでもない
しかしまあ流石に温室なので、なんとなく外よりは南国っぽい感じがあるし、植物も元気な感じがする
細い水音がずっと聞こえていて、半透明のガラスを透かして冬の弱い日差しが入ってくるのが心地よい
客は全然来ない
俺は15分くらいいたけど、他の客はたしか2組くらいしか来なかった
ベンチなんかも特にないし、見るべきものがあるかっていうとないので、なかなか長居はしにくいんだけど、でも、すげえ良かったんだよ
今まで見た中で一番好きだった温室かもしれん
ショボいんだけど、ショボさが良いんだよな
王立って言葉だけで痺れちゃうね。実物がどんなものかとかより。