靴擦れしない靴ってこの世にあるのかしら? と常日頃思っていたのだけれど、ついに運命の出会いを果たしたのがひと月前のこと。
水商売のキレイなお姉さんしか似合わないでしょう、と思って敬遠していた""ESPERANZA""のヒール、これがとっても歩きやすい! それにヒールが7.5センチもあるの!
私はいつ何時でもヒールしか履けません。ヒールを履きたがらない女の子はよく見るけれど、案外同士には出会ったことがない。
なんて他人に語ったら馬鹿にされると分かっているので、普段は口にしません。
でもね、これは嘘なんかじゃないの。私の眺める世界はいつだって+7.5センチに広がっている。ヒールの高さは私が臆病者である証。ありのままの世界と向き合えない、弱さの証。
おとなになればなるほど新しいものに触れることを拒むと言うけれど、どうやら私もその一人らしい。一度はじめてしまった背伸びをやめて、±0センチで生きてゆくのって、世界が根底から覆ってまっさらなスタートを切るみたいで、怖い。
街中の風景に溶け込む私は、今日もフラットシューズで軽やかに走る女の子を目で追っていた。私もあんなふうに、ぺったんこの地面を蹴り上げてみたいものだ。