2021-04-11

妹が自殺未遂したときのこと

数年前、妹が自殺未遂をして入院した。

そのときは妹が自殺未遂をしたとは知らされず、部屋の中で倒れているのを会社の人に見つけられて救急車を呼ばれたと聞かされていた。

妹はNCUという脳専門のICUみたいなところに入院していた。以前妹はてんかん(実際は転換性障害という精神的な病気だったらしい)と診断されていて、その薬を大量に飲んだらしい。そのことを知らなかった私は、妹の病気悪化したのだろうかと思った。

ベッドに横たわる妹の顔を覗き込むと、妹はうっすら笑って「お母さん?」とだけ言った。「姉ちゃんだよ」と言ったのに妹は私を「お母さん」と呼び続け、仕事先(介護施設)で今日は入浴介助があって忙しいはずだということを延々と繰り返した。後で知ったが、私が見舞いに行った曜日にはその施設での入浴介助はないらしい。薬を飲んで倒れた次の日が、入浴介助をする曜日だった。

妹は最後に見た時より痩せて、ぼーっとした顔で、手足を少しも動かさず、同じ話ばかりした。

どうしていいかからず、「ごはん食べてくるから、後でね」と病室から出ていった。私はその足で病院内のカフェに向かい、泣きながらなぜかクリームソーダを飲んだ。

次に顔をあわせたときは、妹が退院して実家に帰ったときだった。妹は痩せたままだったけど、元の姿に戻っているように見えた。私を「姉ちゃん」と呼び、同じ話ばかりすることはなかった。

介護仕事を辞め、精神科に通院しながら仕事を探していた妹は、この季節に事故で亡くなった。前日までごく普通だったと聞いている。

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