宛名とイラストを印刷して、余白に手書きでさらっと書く一言。この「さらっ」ができない。何十枚も書くわけじゃないのに、いつもこの一言に悩む。全面プリントして手書きしなければいいんだけど、余白のあるデザインだし、せめてお世話になった人あてには一言書かなきゃ、と思う。
何を書こう。自分の近況か、相手の健康を祈るのか、やっぱりコロナには触れるべきか、あーだこーだ悩む。面白いことを書こうなんて思ってないのに、コピーライターになりたいわけでもないのに、たった一行が浮かばず数時間も悩んでしまう。
何も考えずに「今年もよろしく」と書いていた子供の頃が懐かしい。いや昔もあれこれ悩んだ結果「今年もよろしく」だったと思い出す。そういえば作文も苦手だった。遠い昔を想っても何か浮かぶわけでもないのに。
こねくり回した結果なんとか完成したものは何だかひねくれていて気持ち悪い。できることなら書き直したい。しかしそんな元気もないし、ましなものができるとも思えない。出すことに意義があるんだと自分に言い聞かせてポストへ投函する。
年が明けて自分あてに届いたものを見ると、穏やかな年になりますようにとか、コロナが収まるといいですねとか、見事にさらっとした当たり障りのない一言で、なぜこれが自分に書けないのかと少し落ち込む。
本気で相手のことを思っているからこそ悩むんじゃないか。 さらっとした中身のない一言なんかもらっても嬉しくないだろ。 それはお前の美徳だよ。たぶん。