齢20の夏、友人が死んだ。癌だそうだ。
葬式の最中、母親は棺の前で泣き崩れ、言葉にならない言葉を叫び通していた。
父親も、顔には出さず落ち着いていたが、心中は母親と同じようなものだろう。
こっちにしてみれば、友人が死んだことを除き、半ば同窓会のようなものである。
無料の飲食までついてくるとは、なんとも太っ腹なご両親だなとさえ感じていた。
香典なんぞは自分の両親に出させているので、気分は最高である。
死んだ友人は、そこまで仲が良い間柄ではない。
成績は自分よりだいぶ上で、果ては学者か医者かと期待されていた。
参列していた友人の1人に、飛び切り性格の破たんした者がいる。
本人にその自覚はどうやらなく、周囲から嫌悪される理由もわからず悲劇のヒロインを気取るようなやつである。
式の最中、彼は言う。
なんせ、自分より上の人間に対して取れる最大級のマウントだからである。
お前は止まるが、俺は進める。