ショッピングモールの喫茶店にて。二歳の息子は寝てしまったが、うまくソファでねてくれているので、ひとりアイスコーヒーを飲んでいた。
妻と五歳の長女は、別行動で、子供服をみるのだといって喫茶店の入り口で別れた。
若い夫婦が隣のテーブルに座っていた。飲み物を飲んだ後、「少しみたいところがある」と言って男性だけ先に席を立った。女性はお腹が大きかった。
六年ほど前を思い出した。身重の妻の気を使って行動しているつもりが、かえって疲れさせていたことがあった。
妊娠中の体調は個人差が大きいと思うし、その女性が、何を考えているかはもちろんわからないが、もしかして、何か不安、不満があったらかわいそうだなと思った。
「お母さんのほうが、10ヶ月早く子供と出会うので、お父さんが子供に気がつくまでもう少しだけかかりますよ。数年すればこの通り、寝た子を抱えて、お父さんだけで楽しくやれますよ」と言えるものなら言いたかったけど、別に困ってもいないかもしれないなと思ったので、心の中にしまっておいた。
そんなことを考えているうちに、男性が戻ってきた。買い物したものを女性に見せると、女性は嬉しそうにしながら、二人は店をでていった。
しばらくすると、妻と娘が帰ってきた。
「まだ寝てるね。交代して、買い物してくる?」と妻が言った。「いや、抱っこしていくよ。」出遅れた10ヶ月を少しずつ取り返すことにした。