弓道なんてやったことなかったけど、今まで運動部ってのに入ったことなかったし、弓道ならそんなに激しくなさそうだし、自分でもついていけそうかなーと思って入った。
初心者の割には上手いって、最初の方は言われてたんだよ。まあ、高校とかで弓道やってた人の方がやっぱり上手いし、試合には出れなかったけど、それなりに楽しく矢を飛ばして遊んでたよ。
でも、ある時から矢がうまく飛ばなくなったんだ。
弓道って、的まで20mくらいあるんだけど、飛ばそう!って思っても2,3m先にぽろって落ちんの。
しかもその時、めいっぱい引いてた弦が顔とかに当たってめちゃくちゃ痛いわけ。ビンタされてるみたいな。
痛いし怖い、でも怖いって思うと余計にうまく飛ばなくなるの。負の連鎖。
部員はみんな的中率ってのが計算されて、高い人から順にリスト化されてんの。もちろん的中率が高い方がすごいってことね。
俺も最初は中の上くらいだったけど、その状態になってからはダントツ最下位よ。
惨めだったねー。自分が所属する集団で底辺になったのって初めてだったな。
それからの俺、その病気みたいなやつ何とか治そうと、人一倍練習したと思う?
しなかったよ。
だって痛いし怖いもん。
逃げたね。ええ、逃げましたとも。
でもね、辞めた日の帰り道の開放感ったらなかったね。
今でも、あの時辞めて正解だったって思うよ。
辛いことからは、逃げようぜ。