2018-06-17

父について

私には父がいない。

まれた時にはいたそうだが、物心ついてからは父がいた記憶がない。

私が生後二ヶ月の頃、交通事故にあったそうだ。

父は赤子だった私を抱いたことはあるのだろうか。

いないのが当たり前だったので、名前も知らない、写真も一枚もない自分の家庭を不思議には思わなかった(というかあまり関心がなかった)のだけど、友人にそのことを話すと驚かれた。世間一般がどうかは分からないが、私がただ冷めているだけということもあるのかもしれない。

二十歳の頃、実家に帰った際に母に呼び出され、父について話すことがある、と言われた。

交通事故で死んだと言ったが、正確には離婚してから交通事故であったことと。絵を描くのが好きで、会社員として働く傍ら小さな展示などを行っていたが、収入が芳しくなかったこと。それが理由で、母の父(私の祖父にあたる)と折り合いが合わなかったこと。そのため、写真も一枚も残していないこと。

普段弱いところを見せることのない母が、泣きながら話してくれた。

母の気持ちを考えると、まだ子供だった私に伝えるのは心底辛かったのだろうなあ、と思うと共に、母が結婚した男性が素敵な人で良かったと思った。

父の事を面と向かって長い時間話したのは初めてだったので、毎年父の日になると、ぼんやりと思い出す。

唯一の父についての思い出。

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