駅前に座っているホームレスのおじさんが「精神は身体に従属する」と呟いていた。
会社の上司がミスをした私に向かって「少し休んで頭を冷やしてこい」と言った。
私は疲れて声も出なかった。
家に帰ってから、ふと思った。
もし精神なら、この疲労した体から抜け出したら楽になるのだろうか。
家々の屋根の隙間を通り抜け、公園の落ち葉を散らし、冷たい夜風を全身に受けながら、私は「あああ」と声にならない叫びを上げていた。
そこには自由があった。何にも邪魔されない自分が存在していた。
「もう元には戻れない。」そう思った。
明日、出勤しない私を気にかけて、上司がマンションに連絡するかもしれない。
管理人が扉を開けると、そこには私の身体が横たわっているだろう。
その体は呼吸をしていないし、心臓は止まっているだろう。
しかし、そんなことはどうでもいい。
今ここに本当の私がいる。それだけで十分だと思った。
これからどこに行こうか?
ふと上を見上げると、夜空に星が輝いていた。
私の魂は夜空に向かって徐々に高度を上げていった。
その輝く光はやがて星々の間に溶け込んで、小さな点の一つになった。
夜空に星がひとつ増えたことを気にする人は誰もいない。
シームレスなおじさんってどんなんだろうと考えてしまった
上司はマンションに連絡しないかもしれない。 管理人は扉を開けないだろう。 数ヶ月後に特殊清掃業者が入るだろう。 そんなこともどうでもよければ、あなたは自由だ。それで十分だ...