あれを見て、ぼんやり思っていたことが、より立体的に浮き彫りになった。
一度や二度のことではなかったのだろう。そうでなければ、冗談でもあんなことはしない。
それを前提にして妄想すると、手放しに喜んだり、褒めそやすのは、どうかと思う。
父親がああいった行動に出た背景には、それに至る経緯があるのだと妄想する。
何を言っても通じない。響かない。行動を改めない。逆にエスカレートする。そのことを咎めると、あの笑顔である。
「ちょっと本気を見せた方が良い。この子供にはいつも見透かされているように思えてならない」
と思ったかどうかは知らない。
おそらく子供は、何も考えていないのだろう。
いつだってやりたいように行動し、それが周囲に迷惑を及ぼしているか、なんて意識化されない。
森の中を探索したら楽しい。廃屋のようなものがあれば入ったら楽しい。ちょっと寒いけど水を飲んで過ごしてれば楽しい。
お腹空いたなと思ってたら見知らぬ人がおにぎりを与えてくれた。食べたら美味しい。
父親はこの件に懲りて、もはや強いことは言わなくなるだろう。