父方の叔母が消えた。
蒸発したのではない。
叔母は結婚せずに一人で暮らしていた。
仕事は大手医薬品メーカーの事務職を続けており、
60歳の定年後は再就職をすることもなく趣味の手芸を楽しんでいた。
ここ2年ほどは音沙汰もなかったが、まだ60代と若いので特に気にかけなかった。
夏の終わり頃、叔母のアパートの大家から電話があった。
家賃滞納が続いているので部屋をあけるということだった。
最悪の事態に備えて父とわたしが立ち会った。
あけると生活感はあるもののもぬけのからだった。
リビングにも風呂場にも叔母はいなかった。
どこにいったのかと思い、寝室をあけると異臭がしており、
布団に人型の跡がついていた。
「ああ」大家は呻いた。
「これ死んでんな」大家は続けた。
わたしが死体がないと言うと
「人間は最後は液体になるんさ」と大家が言った。
よくわからなかったが、人体の60%は水でできているということを
何かのCMで聞いたことがある。
しばらくその布団の染みを見つめた。
そして、叔母はやっぱり蒸発したんだなと思った。
Permalink | 記事への反応(2) | 16:54
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マジレスすると骨は?
虫あんまりいないの?