女の子は羽がありませんでしたが大事にだいじに育てられました。
女の子は周りから「美しい」とか「可愛い」とか言われていました。
だから、羽がなくてもみんなは優しくしてくれるのです。
時折、女の子は可愛いと言われるのではなくて自分が頑張っている姿も褒めてほしいと思いました。
飛ぶのを前提にして街はできているので、とても狭くてデコボコした道を女の子は歩きます。
途中、女の子と同じように羽のない、女の子よりも少し小さい男の子がひとりで本を読んでいました。
男の子の顔がよく見えませんでした。
男の子の座っている地面の周りには白い粉がポツポツと落ちていました。
「ひとりでいるの」
「うん」
「ここは夜になるとすごく暗くなるから、早く帰ったほうがいいよ」
「うん」
「お家はどこにあるの?」
「向こう」
女の子は向こうに孤児院があって、そこでは同じように羽のない子が住んでいると両親が言っていたのを思い出しました。
「うん」
男の子が顔を上げました。
酷い皮膚病だったのです。
白い粉は男の子の皮膚だったのです。
「羽がなくても可愛い顔の子からみんな貰われていったんだよ お姉さんみたいな可愛い顔をしている子から」
「顔は治らないの?」
「治るなら今ここになんかいないよ」
「私は可愛いと言われるのが嫌だ 普通に頑張っているところを褒めてほしい」
男の子は女の子の顔を一発殴ると、孤児院とは反対の方向へ走って行ってしました。
女の子は少し怖かったと思いながら家に帰りました。
それから何ヶ月もたちました。
普段お友達は、黄色いクリームのケーキを食べているというのです。
その翌朝、女の子は鏡を見ると、額の部分に数枚の鱗が生えているのを見つけました。
急に、女の子は怖くなりました。
自分の顔が、あの男の子の顔のようになってしまったらと思うのでした。
女の子は学校に行かずに、羽がある子たちが遊び場にしている近くの高い建物に登りました。