2014-09-12

記憶障害をおこした彼女の話

はいえ、あれが本当に記憶障害だったのかなにか別の病気だったのか今となってはわからないのだけれど、まあとにかく俺の彼女の様子がだんだんおかしくなっていったのだけは事実なんだ。



最初はほんのちょっとしたことだった。

俺たちは毎日のように顔をあわせてデートしてたんだけど、その日、なんだか彼女の発言に違和感を感じたんだ。

「あれ? おまえ、さっきも塩かけたよね?」

「え? あ、そうだっけ?」



そう、ほんのちょっと最初はほんのちょっと前のことをド忘れする程度だった。調味料をかけすぎる、切符をかったことを忘れる、明日デート約束ってもうしたっけ?



そんな感じのことがだんだんエスカレートしていった。今日会う約束したっけ?先週ディズニーランドなんていってないよう。今度うちの両親にあわない?え?もうあったって?うっそだー!



あきらかに記憶がなくなっていってる。すこしずつ昔の彼女にさかのぼってしまっていってる! なんとなくは気がついてた。気がついてたけど彼女病気だなんて認めたくなかった。いやだった。気づかないふりをしてた。それでズルズルいってるうちにとうとう恐れていることがおきた。どんどん記憶がなくなって昔の彼女になっていくっていうことは、つまり、そういうことだ。

「あの・・・ね、きいてくれる? ・・・あたし、あなたのことが好きみたい。 あの・・・ つきあってください!」



それで俺は逃げ出した。彼女のことは好きだったけど、とてもじゃないけど付き合っていける気がしなかった。不気味だった。いくら思い出を積み重ねてもそれより早いスピードで全部なかったことになる。そんなの無理だ。だから、俺は彼女の前から逃げ出した。もう会えないって思った。彼女とはそれっきりだった。だからその後のことはわからないし、彼女が本当に記憶障害だったのかは今もわからないままだ。









「うーん。きちんと組みあげていったつもりだけど、なんか相当ぐちゃぐちゃになってるなー。しょうがない、いったん戻そうね。大丈夫。今度はちゃんと組んであげる」

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はいえ、あれが本当に記憶障害だったのかなにか別の病気だったのか今となってはわからないのだけれど、まあとにかく俺の彼女の様子がだんだんおかしくなっていったのだけは事実なんだ。

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