2023-02-27

3月1日民事訴訟は「第2フェーズ」に移行する

現在民事訴訟IT化が進められている。

最終的には民事訴訟の全面IT化を目指す、というものだ。

このIT化は、3つのフェーズ(段階)に分けて進められる。

既に第1フェーズ実施されており、この3月からは、第2フェーズへと移行するのだ。

(注1)

3つのフェーズ

民事訴訟IT化すると言っても、民事訴訟手続法律規定されている(民事訴訟法)。

そのため、完全なIT化を目指そうとすると、法改正必要になってくる部分がある。

また、システム開発必要になる部分もある。

そこで、IT化の工程は、3つのフェーズに分けられた。



第1フェーズ

法改正必要としない運用

ウェブ会議を利用した争点整理手続など。

第2フェーズ

法改正をすれば直ちに実施可能運用

ウェブ会議の利用による口頭弁論期日など。

第3フェーズ

法改正に加え、システム開発必要運用

訴訟提起のオンライン化など。

(注2)



第1フェーズ

そもそも民事訴訟法には、「争点及び証拠の整理手続」として3つの手続規定されていた(注3)。

弁論準備手続、書面による準備手続、準備的口頭弁論である。(注4)

このうち、おそらく最も多く使われていたのは、弁論準備手続だろう。

もっとも、弁論準備手続の期日においては、原告被告のいずれかの現実の出頭が必要である(一方だけなら、電話での参加も可能)という特徴がある。

他方、書面による準備手続は、原告被告双方が現実に出頭する必要がない(双方共に電話で参加できる電話協議日時を設けることができる)という特徴があり、地味な存在ながら、支部(注5)などで使われてきた(注6)。

なお、準備的口頭弁論は、おそらくほとんど使われてこなかった。



この状況に変化があったのは、IT化とコロナである

原告又は被告のいずれかが現実に出頭する弁論準備は、コロナ禍とは相性が悪い。

一方で、書面による準備手続では、法改正なしにウェブ会議(注7)によることが可能なのだ



かくして、書面による準備手続は、一気に注目度があがった。

争点整理手続は、書面による準備手続に付してウェブ会議で行われることも多くなっていった。



第2フェーズ

3月からの第2フェーズでは、ウェブ会議での弁論準備手続可能になる。

書面による準備手続では、主張書面の陳述や書証の取調べはできないが、弁論準備ではこれができる。

ウェブ会議において出来ることが大幅に増えるといえるだろう。

3月以降、ウェブ会議で書面準備と弁論準備のどちらが多くなるかはまだ分からないが、書面準備の影が薄くなることも考えられる。

なお、ほとんど使われていないであろう準備的口頭弁論であるが、民訴法改正でも廃止されることなく生き残った。

いつか準備的口頭弁論も、日の目を見る日が来るかもしれない。



フェーズ3

一般に、民事訴訟IT化、と聞いてイメージされるのは、フェーズ3の内容かもしれない。

フェーズ3の頃には、民事訴訟様相は様変わりしているだろう。


注1

https://www.courts.go.jp/sapporo/vc-files/sapporo/file/211129_iinkai47_shiryo.pdf

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/dai10/siryou1.pdf



注2

注1の各資料参照



注3

「争点及び証拠の整理手続」とは何か、という話を始めると長くなるので割愛するが、通常の民事訴訟手続のうち、尋問及び判決以外(すなわち大部分)は、主に争点及び証拠の整理が行われていることが多い。



注4

https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html



注5

地方裁判所には、主に県庁所在地にある本庁(「〇〇地方裁判所」の名称)と、それ以外の場所にある支部(「〇〇地方裁判所△△支部」の名称)がある。

北海道のみ県庁所在地以外にも3つの本庁がある。)

https://www.courts.go.jp/courthouse/map/map_list/index.html



注6

安西二郎「遠隔地・小規模の支部における書面による準備手続運用」(判例タイムズ1411号17頁)



注7

実際には、Microsoft Teamsが使われている。

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