2021-11-04

死刑囚に刑の執行日時を事前に知らせるべきか?

数学レクリエーションなど科学啓蒙執筆活動で有名なマーティンガードナーが、雑誌Scientific Americanに連載していた人気連載『数学ゲーム』で紹介した論理パラドクスに「執行不可能死刑」という話がある。概ね、次のような話である

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ある被告人裁判死刑判決を言い渡された。その判決の際、裁判官は次のようにも付け加えた。

「刑の執行は何月の第何週に行われる。しかし、刑の執行が行われる日まで、それを死刑囚に事前に知られないように配慮するものとする」

裁判が終わり、今は死刑囚となった被告人と面会室で面会した弁護士は、死刑を恐れる被告人に対して「安心して下さい。あの判決による刑の執行不可能ですよ」と語り、次のように勇気づけた。

「いいですか?仮に、死刑土曜日に行われるとします。しかし、土曜日よりも前の金曜日まで死刑執行されなかったとしたら、貴方は翌日の土曜日に刑が執行されると気づくことになります。これでは『事前に知られないように』という条件とは矛盾します。ですから土曜日には刑の執行はありません。すると、次は金曜日死刑執行ができるかどうかの話になりますが、これも実行不可能です。金曜日よりも前の木曜日まで死刑執行されなかったとしたら、やはり貴方金曜日に刑が執行されると気づくでしょうから判決矛盾します」

だんだん弁護士説明が飲み込めてきた死刑囚は、表情も声も明るくなった。

「つまり、同じ理屈水曜日火曜日月曜日日曜日判決矛盾することになるのか。だから、刑の執行不可能ということですね!何だか希望が見えてきました」

そして、いよいよ問題の1週間がやってきた。その週の水曜日の朝、刑務官たちが死刑囚の独房を訪れ、彼を刑場に連れて行くことを告げた。

「そんな馬鹿な!」と叫びながら連れて行かれる土壇場になって、死刑囚には「やはり裁判官の『事前に知られないように』という言葉矛盾しておらず、正しかったのだ」と思えてきた。確かに彼は、まさか水曜日死刑執行が行われるとは夢にも思わなかったのだから

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