Plague Inc.という不謹慎な疫病シミュレーションのリプレイばかり見ているが、ウィルスの気持ちが判って面白い。
個としての人間の疫病への恐怖と疫病側の戦略は違うという事が判る。
見るとハードモードのプレイヤー達は症状と致死率が悪化しないように気を使っているのに気付く筈だ。
症状が出てしまうと人間達や国家は新しい疫病の発生に気付く。すると当然隔離や新薬開発などの対策がなされる。
ウィルスは頻繁に変異が起こり、特に重症化する事が多い。これは現実のウィルスも同じ。
一見KILL数が上がるかのようだが実は上がらない。封鎖や隔離などの対処が取られて拡大が阻止されるからだ。
だから重症化変異が起こったらプレイヤーは手動で変異を取り消す。
流行初期は感染力を上げる為の症状を伸ばすのに注力する。特に有効なのが気管支炎、肺炎で、呼吸器の細胞をジャックしてウィルスの複製を作らせながら炎症を起こし、咳で飛散、空気感染させる。
但し症状が出すぎると対策されるので「軽症の呼吸器感染」はウィルスにとってベストなチョイスだ。
軽症患者は検査もせずに歩き回り飛行機に乗って疫病を広めてくれる。
ただゲームなのでシミュレーションが甘い所もある。人類皆殺しが固定目標で、収束するまでのKill数を競ったり風土病化して人口を減らすという選択肢などが無い。
またご都合主義的に途中で変異を選択できるのもシミュとしては甘い。
「初期:軽症or無症状で拡大→全国家が感染したら一気に劇症化でall kill」という戦術が有効だが現実にはキャリアの持っているウィルスまで同じ様に変異するなんて事はない。
だが「潜伏期間が長い」と言うのはこの戦術と似た効果を持っていると言える。
感染者は知らずに歩き回ってウィルスを広げる。その後数割が劇症化してその数割が死ぬ。致死率2とか3%なら個人としての恐怖は少ないがkill数が大きくなるので国家などにとっては脅威となる。
2002年のSARSが収束された後に出てきた今回のSARS-CoV-2の戦略はそれにあたる。
コウモリ宿主のコロナの変異、肺への感染で広がる拡大戦略、症状など全く同じで致死率と重症化率がやや高くなっているだけ。
だが一つパワーアップしているのが「潜伏期間が長いこと」。2~8週間だ。
これによって遺伝子検査以外で感染を感知するのが難しく、隔離がやり難い。個人としては無症状が長く続き、多くは軽症で治癒するので恐怖感も割りと少ない。だが国家や世界の公衆衛生的には極めて脅威だ。
Plague Inc.では死者数が多くなると国家が崩壊し新薬開発を困難にさせる。
SARS-CoV-2の重症化率2割と言うのはダラダラと発症するなら社会を混乱させるがアウトブレイクが急激だと社会が一時的に崩壊するには十分な数字だ。
SARS 2002で収束されたコウモリコロナが戦略を練り直し、潜伏期間を伸ばして感染力を上げてきたのが今回のSARS-CoV-2だろう。