はてなキーワード: カブトエビとは
店の床をゲンゴロウが這っていたので取っ捕まえてAさんに見せたら、今時激レアだと驚いていた。
Aさんがいうには、この辺には田んぼが沢山あるけど、水棲昆虫の類いはほとんど見られないのだそう。
というのも、ここ二十年ばかりで田んぼが激減したことに加えて、残った田んぼにも虫除け剤が撒かれているからだという。ホウネンエビやカブトエビが田んぼに住み着くのを防ぐための薬剤だ。結果、田んぼに棲む生き物の生態系上位にいたゲンゴロウやタガメ、ミズカマキリはエサを失って生きられなくなった、という訳だ。
私なんかは田んぼに棲む生物の知識が小学校時代で止まっていて更新されていなかったから、そんなことになっているとは知らなかった。
Aさんは店内に変わった虫が飛び込んで来ると捕獲して家に持って帰るのだけど、ゲンゴロウはさすがにレア過ぎて一匹でも捕るのは惜しいといって、近くの田んぼにゲンゴロウを逃がしに行った。
トリオップスというのは、和名でカブトエビ、生物分類でいうと「甲殻綱鰓脚亜綱背甲目カブトエビ科カブトエビ」のことである。
何故今トリオップスなのかという問いに僕は答えを持ち合わせていない。ただ今僕の手元にある年賀状にトリオップスもしくはカブトエビの近況が書かれているという事実が歴然と存在するのみである。
ただし、その年賀状は1998年のものでつまりは今から九年以上前のトリオップスの近況である。トリオップスの命は儚い。もう彼は生きてはいないだろう。
それ以前にその年賀状には「トリオップス君は死んじゃいました」(意訳)とかかれている。つまり九年も前に帰らぬエビになっていたというわけである。あまり悲しくはない。
何故彼女が年賀状にトリオップスの近況を書く心境に至ったのかは定かではない。トリオップスが死んだのがそれほどまでに悲しかったからであろうか。否、その年賀状の文面からは悲壮感は漂ってこない。しかし、今になって想像してみるにそのカブトエビを彼女にあげたのがほかならぬ僕であるからではないだろうか。
そう思って昔の記憶を検索してみたのだけれど、どうしてもそのときの状況を思い出すことが出来ない。第一カブトエビの卵なんて(カブトエビの卵は乾燥状態に強く、市販されているのはこの卵である)、女の子にプレゼントとしてあげるものとして最低の部類に入る。いやそれどころか選択肢にあがることすらない。
もし僕がカブトエビ(の卵)を貰ったとしても、絶対に育てない。多分笑って受け取るだろうけど、育てないことに関してはもう絶対の自信がある。だって水槽を用意しないといけないんだぜ。
ここでの結論はつまり、男子はトリオップス君を育ててくれるような彼女を見つけろってことだ。そして、女子はカブトエビの卵を貰ってついていけないと思ったら、さっさと振っちまえということだ。それは全然悪いことじゃない。
って逃げるのも悪いので今思いついた私見でも書いてみる。
オタ趣味それ自体はルサンチマンとかじゃなくて、別の沿線上にあるんじゃないかなと思うんです。
あくまで一例ですが……「テケテケテケ」とか奇声を発するギドラに心弾ませた時代が誰にでもあったでしょう。田んぼでカブトエビ捕まえて飼おうとしたけれど殺してしまったことが誰にでもあったでしょう。割り箸鉄砲を作って、改造して改造しまくった結果危険物を生み出して、家の硝子を割って怒られたことが誰にでもあったでしょう。ライトや電卓、時計などを分解して、直せなくなって隠蔽してしまって、でも罪悪感に苛まれて家族の見ていない時に直そうと頑張ったことも、たぶんあったでしょう。それどころか!背中を丸めて空を飛ぶゴジラに目を輝かせた人だって多いはず!自分でアニメ作ろうとしてお姉ちゃんの部屋からノートをパクってひたすら絵を描いたけど上手くいかなくてしょんぼりした上、バレて怒られた人も多いはず!
オタクっていうのは、たぶんこの系譜に位置しているんじゃないかと思うんです。たぶん、彼らは月の子以前なんだと思うんです。