先日、兄猫の方が雀を取ってきた。
朝方起きると軒先にちょことんと雀の死骸が置かれているのを見つけ、もしや…と思って猫を見ると兄猫の方がドヤっとしてた。
こういうときは褒めた方が良いのだと何かで聞いた気がしたので一応兄猫を褒め、頭を撫でてやると兄猫は気持ちよさそうに「にゃあ」と鳴いた。
翌日、朝から弟猫の姿が見えずご飯の時間になっても現れない。どうしたんだろう?と心配になって外に呼び掛けてみても返事がない。
いつもだったら「にゃ~あ~」とけだるそうな声を出して帰ってくるのに。
結局弟猫はその日帰ってこず、丸一日家を空けるのは初めてだったので非常に心配した。
しかし兄猫の方はケロッとしており、弟のことを心配するような素振りは見せない。
そんな薄情者だったのか…と兄猫を見つめると彼はプイッと顔を逸らし、小さく「にゃ」と鳴いた。
深夜頃だった。
玄関の引き戸をトントン、トントンと叩く音が聞こえ、何事かと戸を開けると足元に弟猫がいた。
弟猫は煤で汚れたみたいに白模様の箇所を薄黒くしており、顔も汚れている。
その顔は何だかとても疲れて見えた。
弟猫は私と目を合わすと「…にゃあ」と情けなく鳴き、それから申し訳なさそうに軒先のある一点を見た。
そのとき「あっ」と思った。弟猫が見つめていたのは先日、兄猫が雀を置いた場所だったのだ。
私は全ての事情を察し、だいじょうだよ。いいんだよと言って弟猫頭を撫でた。
彼は最初不服そうにしていたがやがて受け入れたように目を細めて身を寄せスリスリすると、それからゆっくりゴロゴロと喉を鳴らした。
それから家に入るとご飯をがっついて食べた。よほどお腹が減っていたんだろう。兄猫はその姿を傍で見守り、じっと佇んでいた。
それを見て、私はようやくホッとした。