むかしむかしある東の島に、立派なピカピカの家が建ちました。
はたけをたがやしたり、さかなをとったり、器用なものは便利な道具を作ったり商売をはじめたりしました。
時が経ち、大きくなった子供達は自分の部屋を作ることになりました。
立派な元の家は建て替えるのが大変なので、それぞれが自分の都合に合わせて部屋を増築することにしました。
立派な元の家にくっついた、たくさんの部屋ができました。
部屋はあまりにたくさんだったので、どこへ行くにもまるで迷路のようにあちこち迷わないといけませんでした。
それでも子どもたちはそれぞれ自分の部屋の増築をつづけました。しだいに子供たちは、はたけやさかなとりや道具作りや商売よりも、増築に夢中になっていきました。
さらに時が経ち、立派な元の家は少しずつ傷んできました。雨漏りしたり、ネズミが穴を開けたり、窓が割られたりしました。
子供たちは屋根をなおしたり、穴を塞いだり、窓を直したりしましたが、元の家を建て替えることはできませんでした。
それでも子供たちは自分の部屋の増築を続けました。もう迷路どころかもつれた毛糸玉のように複雑になった家では、子どもたちがお互いの部屋を行き来することさえ難しくなりました。
もっと時が経ち、子供たちは老人になりました。老人になった子供たちは、これまでずっと増築ばかりしていたので、自分たちの子供は少ししかいませんでした。
元の家はあいかわらず雨漏りしたりネズミが穴を空けたり窓が割られたりしていますが、老人になった子どもたちはもうそれを直すことはできませんでした。
増築した部屋で育った少しの若い子供たちは、もつれた毛糸玉のようにこんがらがった家の中を歩き回ることは怖くてできません。
元の家が傷んでいても、どこへ行って何を直せばいいかもわかりませんでした。
もっと時が経ち、今度は増築した部屋が傷みはじめました。老人になった子供たちは、病気になって立てなくなりました。
少しの若い子供たちは、家を直したり、老人になった子供たちの看病をしてばかりいるので、自分たちの子供は少ししかいませんでした。