10年ほど前のこと。
深夜に車で家に帰る途中、曲がる道を間違えて、小さな住宅地に迷い込んでしまった。
Uターンするには道が狭いが、見たところ山に囲まれているので、外周をぐるっと一周すれば元の道に復帰できそうな気がする。
「行き止まりになりませんように」と祈りながら真っ暗な住宅地をそろりそろりと奥に進んだ。
ヘッドライトに照らし出される道路の様子がおかしいことに気づいた。路面が白く輝いている。
近づいて車を止めると、そのあたりの路面全体に、おびただしい数のペットボトルが散乱していた。
みんな車に踏み潰されてぺしゃんこだが2Lサイズのペットボトルだ。
「なんだこりゃ…」と声に出してしまった。
さらに、周りを見回すと、道の両側にもこれまたおびただしい数の2Lペットボトルがびっしりと並べられていた。
「ひっ…」と声にならない叫びが出た。
数百本のペットボトルの群れに囲まれているのは1軒の荒廃した家。
庭木は伸び放題で、隣の家にも路上にも枝がはみ出しまくっている。
門柱には、黄色いビニール傘が道に向かって開かれた状態で固定されていた。
なんなの。早くこの場を離れたい。
車を進めるとタイヤがペットボトルの残骸を踏みつけてバリバリガシャガシャと派手な音を立てた。やばいやばい。
何度もバックミラーを見ながら逃げるようにその住宅地を離脱した。
家に帰ってストリートビューを確認すると、ストリートビューにもあのおびただしいペットボトルははっきりと記録されていた。
過去にさかのぼっても一貫してそのあたりはペットボトルだらけである。
路上の残骸がきれいに片付けられた写真もあるが、その場合でも「フタ」がびっしりと敷き詰められていたりする。
なんなんだこの家は一体。
そのペットボトルに入っているのは「血液」だよ 車を進めるとタイヤがペットボトルの残骸を踏みつけてバリバリガシャガシャと派手な音を立てた。やばいやばい。