自分はある。
数年前の9月。脳の神経伝達物質がバグって死ぬことしか考えられない状態に陥り、淡々と仕事のタクスをこなすように、ホームセンターでロープを買い、死に場所の選定、下見、縊首のテストもやり、死ぬことを目標に日々を生きていた。
実行の当日は、人に見つかることを避けるため朝3時に家を出た。外は薄明るい。セミもまだ鳴いておらず。
計画通り、近所の公園の木に手早く紐をかけ、全体重をかけようとした。でも、身体が無意識にそれを拒絶した。こわかった。
「え?まじで?本当に死ぬのか。」
「首を吊って、何秒後に意識が途切れるのか。」
「自分が死んだことは自分では意識ができない。死んでしまった後、どうなってしまうのか?」
という思考が一気に頭を巡っていた。
思い切りが悪く、一瞬考えてしまった自分も弱かったのだと思う。深淵を覗くように「死」に目を凝らしていくと、恐怖感が噴き出した。こちらが深淵に覗かれるというのはこういうとかと思った。