俺は音楽が好きだ。
友人にとって音楽はまさに生命であり、これまで何度も音楽に感動し、何度も音楽に助けられてきた。
俺は音楽が好きだが、しかし彼のように心すべてを奪われた経験がない。
名言・名句・名文を目にするとハッとし、心を奪われ、その刹那すべてが静止したかのように息を呑んだ。
その瞬間、俺の心の中には風が吹き込む。
新たな世界が芽吹く煌きとよろめき。
それを与えてくれるのが言葉だった。
言葉一つで、なんて思われようとも、そんな言葉一つが一人の人間の価値観をガラッと変えてしまえるような、そんな力があることを誰よりも知っているから。
これも言葉に感動した原体験を未だ忘れずに居るからだし、今でもハッとする言葉に出会うことは多い。
心に風が吹き抜け、その風は精神を擽り、自然と笑みがこぼれてくる。
この感情を伝え、原体験の共有をしたいと、心の何処かで願っているのかもしれない。
そして、思うのだ。
心に靡いた風をとらえ、それをずっと忘れずに居ることが大切なのだと。
風を求めることなんだ。