しばらく何もできなかった。
最低限の身だしなみすら整える気力がなかったし、そもそも自分がどう見えているか考える余裕すらなかった。
最近少し回復してきて、自分のこととか部屋の中の様子とか、狭い視野なりにようやく目に入るようになってきた。
目に入らない方がよかった。
対処の仕方が分からないことばかりで、情けなくなりながらインターネットで調べたら、広告とページ分割ばかりのサイトが延々出てきた。
書いてある手順も項目がいくつもあって、「はじめに中の物を全て外に出します」とか、「一ヶ月に一度」とか、こういうことを世の中のちゃんとした人達はやっているんだろうけど、できないと思って、もっと情けない気持ちになった。
身の回りのことができなくて気にする余裕もないときのほうが、身の回りのことができないのに気になる今よりマシだった気がする。
このままもっと回復したらできるようになるかもしれないから今は放っておこうと思っても、見つけた問題が頭の中でどんどん大きくなっていく。
いろんなことは放置しておくとその分だけ悪化していくけど、そうじゃなくて対処する元気が出るまで今のままでいてくれればいいのに。
最悪だけど、こういうとき何もかも代わりにやってくれる人がいればいいのにと思ってしまう。
誰かの優しい恋人とか伴侶の話を思い出して、全然筋が通らないのに「ズルだ」と思ってしまう。
でも逆に考えたら、そんな人がいたら頼りきって迷惑を掛けまくるに決まってるんだから、そういう人間を好きになる人がいなくてよかった。