5年ほど前に転職して、初めて都会で暮らすようになった。新しい環境での仕事、新しい場所での生活にワクワクしつつも不安を抱えての上京だった。
入社して暫くした頃の話。
息抜きに会社の庭に出てみると(都会の会社なのに小さな庭があるのだ)、当たり前のように木の下で寝ているものがいた。
それが私と先輩の出会いだった。
慌ててオフィスに戻って上司に聞くと、さも当然のように、結構前からいるよ。地域猫ってやつだよ、との話。
それからというもの、私はちょくちょく先輩の顔を見に行くようになった。
もちろん、先輩というのは私が心の中で呼んでいるだけの名称である。
年下だろうと猫だろうと、自分より先に働いている人(?)はみんな先輩だから。
先輩は割とクールで、媚びたりはしない。
でもたまに、ゴロンとお腹を見せてきたりする。
それで騙されて触ろうとすると噛まれそうになるので要注意である。
上司や同僚と先輩の話をするようになって、段々と職場に馴染むことができた。
今の私があるのも先輩のおかげかもしれない。