自分の状態をわかってくれない、妻だったら説明しなくてもわかってくれるはずだ、自分が正しいという現実をそのまま信じてくれてもいいはずだ……というように、彼らは、思い通りにならないのは妻のせいなのだ、と考える。
こうして、「妻が思い通りになってくれない」という被害者意識から、DV(殴ったり、怒鳴ったり、家具を破壊したり、妻を貶めるなど)は生まれるのだ。
北米のDV加害者プログラムに参加する男性では、妻に対する嫉妬がDVの引き金になっている例が多く、この点で日本とは異なっている。
日本では、妻が他の男性に惹かれるなどと考えもしない例が多い。極言すれば、日本の男性は妻を女性としてではなく、「自分をわかってくれる存在=母」としてとらえているのではないか。
母への依存だとすればわかりやすいが、実際にはもっと入り組んでいる。「命令しながら依存する」のであり、「威張りながら甘える」と言い換えてもいい。
そして、彼らは、妻に対して受動的であるなどと思ってもみないのである。まして被害者意識を抱いているとも思わず、ただひたすら「思い通りにならない」ことに怒っているだけなのだ。