2020-03-21

彼岸から祖母が亡くなる前のことを思い出した。

妙に冷たいのに日差しが入ってくる明るい病室で、呼吸器をつけて眠る祖母は、癌の痛み止めのモルヒネだか何だかのためにも意識ほとんどなくて、静かな吐息が死に向かう人間には思えずちぐはぐした印象を覚えたことをよく覚えてる。疲れて悲しい響きのする母と叔母の声を聞きながら、握った祖母のひんやりとしたやわらかい黄色くなった手と、漂う甘ったるくて少し吐き気を催すような匂いを一生忘れないと思う。

その後あっという間に亡くなった祖母葬式では、本当にきれいに化粧をしてもらって、ただただ眠ってるようにしか見えなかったのに、触れた頬はびっくりするほどかたくて冷たかった。葬式の前、叔父半年ほど前に亡くなっていたので、追いかけて逝ってしまったんだ、と冷静に考えていたけど、あれは立て続けの死に感情麻痺していたんだと思う。触れてやっと死を実感した。もう二度と目を覚まさない。当たり前のことをあの肌の冷たさでようやく理解して、本当に死んでしまったんだとぼろぼろ泣いた。

もう15年は経つだろうか。墓参りに来いという知らせかもしれない。

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