オーナーが今頃になってやっと、店頭の衛生品コーナーに「マスクの購入は一人一つまで」と書いていなかったことに気づいたのだそうだ。
「ぼちぼち入荷してるのに、次の日には全部売れちゃってるの、おかしいと思ってた!」
衛生品は週に二回、夕方に入荷して、検品ののち早ければ深夜までに品出しが出来るのだけど、翌日にオーナーが出勤すると、もうないのだ……。
以前、派遣の人がシフトに入っていたときに、衛生品を含む雑貨の検品品出しをしていたら、途中で派遣の人が、
「後でマスクを品出しする前に見せてくれません?私が買うので」
と言われた。それは、どうなのか……?と思って首を傾げている間に、店が混み始めたので、結局マスクはその日のシフト中には出されず、派遣の人も私と同じ時間に上がった。なので派遣の人はマスクを買えず仕舞いだったということだ。
何かが品薄だという時、店員が自らその品物を買うということがしばしばある。今月の上旬も、フリーターバイトの人が、休憩時間の途中で何でか唐突にマスクを一箱買っていたので、何で?って思ったのだけど(この人自分のマスクやティッシュその他を事務所の高い所に置いているのである。マスクもその時すでに一箱置いていたはずだ)、そのときは普通にどこの店頭にもあったマスクが、翌日はすってんてんに無くなっていた。フリーターバイトの人は恐らく、休憩中にスマホでネットニュースかなんかを見て、マスクが店頭から無くなる恐れがあることを知って、早めの確保をしたのだろう。こういう事が出来るっていうのは小売り店に勤めることのメリットかもしれない、けど、そんなん運よくタイミングが合えばこそで、勿論バカ売れ最中に手が空かなければ、品物がすっかり得れて行くのを横目に、あーあと内心嘆くしかない。
私はフリーターバイトの人がマスクを買っているのを見た翌朝に近くのドラッグストアに行った。もう既にマスクはきれいさっぱり品切れだった。