同い年の同期が死んだ。
ほとんど話したことはない。人づてに陽気な人だと聞いていた。就職して10年にも満たない。まだまだ楽しいことがたくさんあっただろうに、可哀想に、と思うより早く、羨ましいと思った。
死にたいわけではない。ただ、これから先 味わうであろう苦しみを、彼は経験しなくて済むのかと思うと羨ましかった。
毎日、毎日、働いて、休日は疲れで寝てばかり。何かをする気持ちも体力もない。
昔はワクワクしてたんだ。毎日が旅の始まりのように。図書館も書店も映画館も、レンタルショップだって、ただ誰かと道を歩いているだけだって。
「これじゃあ、金も時間も足りないな」って贅沢な絶望をしていた。
今はどうだ。あの頃 読みたいと思っていた本なんてほとんど読んでいない。なのに、書店に行っても全く心が揺さぶられない。
苦しみがあれば楽しみもあるだろう。苦しみがあっても楽しみがあれば乗り越えられるだろう。
だけど、楽しみがないんだ。楽しめる心がなくなってしまったんだ。
あの頃は、死んだ人間を羨ましがるなんて思いもしなかった。もう一度、子供のころのようにワクワクしたい。何気ないことに眼を輝かせたい。
苦しみなんて簡単に受け入れられるくらい。