友人に誘われて柄にもなく、六本木へ行った。
六本木はハイソな感じがして居心地が悪い。池袋とか上野とかそっちのほうが落ち着く。
普段街を歩いていても、気にもかけなかった。豪勢なタワーマンション、颯爽と駆け抜ける高級外車など友人は狂った世界を値踏みして値段を教えてくれた。
これからの人生、なにがあっても綺麗で快適なタワーマンションに住むこともないし、高速で追い越し車線を走り続けそうな車を買うこともない、という事実が突き付けられ胸を打った。
そういうモノを持つ人は、どこか別の世界に住む人。僕は自分の世界を生きるのだと思っていたが、少しばかり心が重くなった。
悲しいような、そうでもないような。同年代の人たちが、ぼくにはできないすごいことを成し遂げ、一目置かれて行く。
そんな光景を目にするたびに、頭を振って「他人が何をするかはメインテーマじゃない。ぼくは何をしたいのか?」にフォーカスしようとしてきた。
でもね、悲しいのさ。年を取ると自分の限界がわかるってこういうことか。
ずっと、怖かった。自分自身の発想の貧弱さに嫌気がさしている。これから生み出すアイデアは、自分さえも熱中させられない愚かなものしかないんじゃないかって。
駆け抜けているときはね、怖くないんだよ。前しか見えないから。ときどき止まったときが危ないんだ。いろいろ見てしまうから。
僕にはそれができるだろうか。