就職してから、1年目の冬、会社に電話が掛かってきた。電話に出ると父親からだった。
「御祖父さんが亡くなった」
ぼくはその時、ああ死んだのだなとただ漠然と思った。年齢も90歳を超えていていつ亡くなってもおかしくはなかったから。
電話を切って、その死がまだぼんやりとしたものだったので何とも言えない気持ちになった。
和室の部屋に布団が敷かれていて、その中でおじいさんが目を閉じて寝ているようだった。
御祖父さんに最後にあったのは3年くらい前だろうか。御祖父さんは認知症になり、ぼくは兄と間違われ、母のこともわからなくなっていた。
最後の再会が死ぬときだなんて、あんまりだ。でもその死がまだリアルなものには感じられなかった。
また後日葬式をするということで、自宅に帰ることにした。
帰りの新幹線の中で、御祖父さんの人生のことを想った。ぼくの母を育て、そしてその母がぼくを産み、命を繋いでいく。
人はいつか必ず死ぬのだけれど、命を繋いでいくということはやめない。
ぼくもまた誰かの命を繋いでいきたいと思った。