2018-11-09

はじめて死体を見た時

ぼくがはじめて人の死体を見たのは成人してからであった。

就職してから、1年目の冬、会社電話が掛かってきた。電話に出ると父親からだった。

「御祖父さんが亡くなった」

ぼくはその時、ああ死んだのだなとただ漠然と思った。年齢も90歳を超えていていつ亡くなってもおかしくはなかったから。

電話を切って、その死がまだぼんやりとしたものだったので何とも言えない気持ちになった。

その日は早めに仕事を切り上げて、実家に戻ることにした。

和室の部屋に布団が敷かれていて、その中でおじいさんが目を閉じて寝ているようだった。

祖父さんに最後にあったのは3年くらい前だろうか。御祖父さんは認知症になり、ぼくは兄と間違われ、母のこともわからなくなっていた。

夜の町を徘徊するようになり、施設に入れられた。

最後の再会が死ぬときだなんて、あんまりだ。でもその死がまだリアルものには感じられなかった。

また後日葬式をするということで、自宅に帰ることにした。

帰りの新幹線の中で、御祖父さんの人生のことを想った。ぼくの母を育て、そしてその母がぼくを産み、命を繋いでいく。

はいつか必ず死ぬのだけれど、命を繋いでいくということはやめない。

急に死というものが怖くなって自然と涙が溢れた。

死というものは悲しいけど、御祖父さんは命を繋いでくれた。

ぼくもまた誰かの命を繋いでいきたいと思った。

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