「隕石が百パーセント落ちてくる。地球はもう終わりだ」という、妄想あるあるな夢を見た。
わたしは外出先で一人それを知り、財布の中身千円ちょいをはたいてチョコを買った。コージーコーナーの、現実世界で恋人に貰って美味しかったチョコ。また食べたいと思っていた。店員がやたら愛想が良かった。
チョコを持って空港に行った。展望デッキの窓ガラスの向こうは夕焼けだった。ベンチに座ってチョコを一つ食べた。他にも人はいた。みんな、夕焼けを見に来ました、みたいな顔をしていた。
電車の中に一人怖い人がいると、周りに独特の連帯感が生まれる。「あの怖い人を刺激してはいけない」みたいな。まさにそれだった。
私と同じように空を眺める人も、コージーコーナーの店員も、隕石を信じていないわけではなかった。隕石をすぐそばに感じていたからこそ、まるでなんとも思っていないように振る舞うしかなかった。
あえて家族や恋人に連絡は取らなかった。そんなことをしたら隕石を刺激する。みんなそう思っているようだった。ただどこかで、もしかしたらこの場にいるこの人たちが最期を迎えるときの仲間かもしれない、という空気が流れていた。
車内の怖い人を気にしつつ車掌のアナウンスをいつもより真剣に聞くように、みんなただ夕日を見ていた。