あれからもう10年が経つ。当時本土に逃れた日本人は特権階級のほんの一握り。
「残留日本人」と呼ばれる人々はロシアによる占領により帰国など許されることはなかった。
ロシア人による差別も珍しいものではない。しかし残留日本人達はある程度の権利が保障されていた。
残留日本人にはロシアから与えられた大きな義務があったからである。
10年前、まだ日本として、北海道として北の大地が認知されていた頃には当たり前に流通していた、ある商品の生産をすることである。
北の大地に残された日本人はただひたすらにストロングゼロの生産を続けた。それが彼らに許された唯一の生存戦略なのである。
ロシア統治後に生まれた残留日本人二世。まだ幼い彼らを守るためにもストロングゼロをロシア側に供給しなければならない。
いや、ロシア人だけではない。