異世界転生ものというのは、事故で全身がボロボロになって病院で高度な医療を受けて辛うじて生きているけれど、いわゆる植物人間という状態になってしまった主人公が見ている夢なのだという説を聞いたことがある。いや、俺の脳内から聴こえてきたのかも知れない。
植物人間になってしまった人が見ている夢という設定に、この異世界スマフォは実によく合っていると思う。他の異世界転生もの以上にそれらしい。夢のようなとりとめのない話の展開、夢のように願望が実現し、夢のようにご都合主義である。夢の中ではっと閃いた素晴らしいアイデアが目が覚めてみるとどうということもないということもある。
中国の古典でも、日本の文学でも、山の中で道に迷って桃源郷に行って夢のように過ごすが気がつくとそんな場所はなく今のは夢だったのではないかというような短編はいくつかあるではないか。そういう桃源郷ものの話の初めを転生にして、短編の途中を引き伸ばして、オチを省略したようなものである。
騙されたと思って、主人公が明日にも死ぬかもしれない植物人間として病院に横たわって儚い夢を見ているという設定で「異世界はスマートフォンとともに」を見て欲しい。きっと主人公に好意が持てるだろう。